一年半ほど前の話。私はバーやクラブなどでピアノを演奏する仕事をしていた。大して得意なわけでもうまいわけでもなかったが、ある時毎週同じ時間帯にピアノの一番近くの席に1人で座り、ピアノを聴きにきてくださる方がいることに気が付いた。お酒も飲まずいつも1人で来ている美人の方。という印象があった。本当に何度も何度も来て下さるので『いつもありがとうございます。お酒はお飲みにならないんですか』と尋ねた。それから連絡先を交換したり仲良くなってプライベートで会うようになっあ。彼女は私の1歳年上の大学生。彼女の親はシングルマザーで小学生の妹がいる。彼女も母親も生まれつき体が悪いこと。母親が離婚のショックから働くことが出来なくなり、家族のために頑張って働いていること。バイトをいくつもかけ持ちして何とかやっていること。私のピアノを聴くことを楽しみに1週間頑張ってくれていることを知った。
  付き合うようになってしばらくしてから、彼女が店に来ないことが3週間ほど続いた。私は心配して連絡をしたところ彼女は『白血病』で入院していたと知った。そんな子にたくさん働かせるのは良くない。私に何か出来ることはないか。助けられるのでは。と思った矢先。彼女は過労で死んだ。そう過労で。『白血病』ではなく過労で。私は身体中の水分がなくなるのではないかというほど涙が出た。毎日のように泣いた。病気の彼女を頑張らせて、病気ではなく過労で死なせたのは僕達周りの人間だ。過労で亡くなるのは周りの人間のせいもある。とにかく自分を責めた。それからというもの私はうつ病になり精神科に通うようになった。そしてピアノも弾けなくなった。