私は母校に向かう途中。


そこで特別講義が行われるらしい。

駅をでて、バス停の前、私は友人を見つけた。



なんでも職を探していると言う。良い当てが見つかりそうだ、
友人はそう言った。


私は子どもの手をひきながら、「じゃ私もついでにそれをやる」と言った。

友人はこれからいって私の分も了承を得てこようと言った。


私はその友と別れ、二人の子を連れ、かつての学び舎に向かった。


誰かが来やすく声をかけてきた。学友らしいが、知らない人の顔だった。





教室は人であふれていた。

私は子どもたちを隣に座らせ、そうして男を探す。


探してはいけないと思いながらも…



かすかに頭に残る気配を頼りに、男を探す。


誰にも気がつかれないように、そっと…



しかしそこには人が多すぎた。本、人、話し声、鞄、荷物…


子どもにもかまわなければならない。
仲の良いものたちがしきりに話しかけてくる。

私はまるで男を探すどころではなった。




諦めかけたその時、段違いになった会場の、私のすぐ頭の上を黒い靴が
通った。その靴が通る時だけ、

記憶とそこにある空間が音を緩めるような気がした。



(いた!)



私はしめやかに男のいたことを悟り、そうして沈黙した。

男は私のいるのを知っていた。

私が子どもを連れているのも…

それでいて、何も言わずに通り過ぎたのだ。


頭の上を、そっと、私の体をかすめもせずに…



私は男のいた方を見た。


不思議と、男には上半身がなかった。



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今朝がた見た夢を書きました。

おかしな夢を見た で始まる、漱石の夢十夜を読んだからかな?



せっかくなので、それになぞらえて書きました。

しかし、夢十夜、あの第五夜が気にいらない。ひどすぎる。




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文豪シリーズもご覧ください。
人間失格
桜桃忌はこちら
太宰とは何者だったか?はこちら

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$本を巡る旅