誰にも見られずに死んでいったあの子


まだどこにいるのかもわからないあの子。


どこか遠くで見つかって、誰とも知らずに土に埋められたあの人。


ねぇ、これでよかったの?


プカプカ、ゆらゆら波間をぬって、


果てない旅に出たいのち。


小さな魚や、虫たちが、コチコチ体をついばんで



あすの命へつないでいく。


おれて、めくれて、はがされて、


それでもいのちにかわっていく。


あの子の行方はしれないけれど、



あの子のいのちは生きている。 



広い大地の灯火が、大きな水の源に


あの子はいのちをつないでる。





東日本大震災から一年。


いまだ傷跡の癒えない中、少し想いを綴りました。


私たち人間は食物連鎖のトップに位置します。

ですが、自然にかえることはありません。



生きることは奪うこと。


私たちは他の命を食べることで、その犠牲の上に成り立っています。


だとしたら、死ぬことは与えること。


死んで朽ちていく中で、その恵みを他の生き物に与え、



帰していくのがやはり本来の姿ではないかと思います。


いまだ行方の分からない多くの方がおられる中で、



悲しい現実に直面されている方の前で言うには忍びないですが、




波間を漂いながら、どこかの土に埋められながら


いのちを帰していかれた犠牲者の方に学ばねばと


そんな思いでいます。