春から転校してきたエミちゃんと仲良くなった。
学校から帰るといつものようにエミちゃんちへ遊びに行った。
エミちゃんも冒険が大好きで、二階の窓から見える東京タワーに行ってみたいねって話になった。
エミちゃんちの前のバス停に東京タワー行きのバスが来ることを二人とも知っていたから
すぐ行こうということになった。
すぴかはお母さんとバスで品川駅まで行ったことがあって、子ども料金が10円って知っていた。
二人は無駄使いしないように往復のバス代20円だけ持って冒険の旅に出た。
来た、来た、「東京タワー行き」のバス。
「どうぞ」と車掌さんがドアを開けてくれた。
すぴかはドキドキしながら乗り込んだ。
見たことのない景色を見ながらエミちゃんとニコニコしていたら車掌さんが来た。
「どちらまでですか?」
「東京タワーまで」
「一人15円です」
「…」
「はい」
エミちゃんが20円出した。
すぴかも20円出したら、車掌さんは「二人で30円でいいですよ」と10円返してくれた。
顔を見合わせた二人から笑顔が消えていた。
あーあ、どうしよう、帰りのバス代が足りない…。
帰りは歩きになるかもしれない。
すぴかはバスが通る道順を覚えておこうと思った。
そして、バスは東京タワーに着いた。
家から見るのと全然違って大きくて高いね。
エミちゃんとタワーのおみやげ屋さんを見てまわった。
すぴかはお菓子屋さんで2個入り10円のあめ玉を見つけて買った。
エミちゃんと1つずつほおばった。
「お金なくなったけど、あめ、おいしいね」と二人は笑った。
さあ、帰らないと暗くなっちゃう。
二人は来たときに覚えた道を歩きはじめた。
「こっちだったよね」
「そうだったかもね」
もう暗くなってからやっと品川駅までたどりついた。
品川駅はお母さんと時々来るけど、景色が全然違う。
どうやら駅の反対側のようだ。
ここからまたバスで来た道を探すより、駅の向こう側に出られたら、知ってる道だから早く帰れる。
でも駅に入らないと向こう側には出られない。
すぴかはエミちゃんにコソコソと言うと、改札に入る大人の後に付いて入った。
駅員さんは気づかなかったようだ。
エミちゃんも別の人の後ろに付いて入ってきた。
「やったね」二人は通路を走って向こう側に向かった。
今度は改札から出る大人に付いて出た。
「良かったねー、これで帰れるね」
エミちゃんの家の前で別れてすぴかは家に帰った。
やっぱりお母さんに怒られた。
「こんな時間までどこに行ってたの!」
「品川駅のデパートで遊んでたら暗くなっちゃった」
東京タワーへの冒険の旅のことは内緒にしようとエミちゃんと約束していた。
エミちゃんは次の春、転校していった。
あの冒険は二人の伝説になった。

