亜紀との出会いは、単純なものだった。ただの、ヒトメボレ。もちろん、俺のだ。
具体的に言うと、海の海岸で、すれちがいざまに目が合って、落とされた。
真夏の海岸。まるで昼の都心の交差点のように人が込み合った中で、彼女はひときわ目立っていた。
別段、目立つ水着をきていたわけではない。それどころか水着の上に薄いワンピースをまとっていた。
けれど、そのまっすぐに一点だけを見つめる強い瞳は人をひきつけて離さなかった。
俺もその目に引き付けられたひとりだったって言う、そんなありがちな話だ。
そんな亜紀と俺とがどうやって知り合ったかっていうと。
「清、今日の晩御飯何が良い?」
亜紀の澄んだ声は、思い出に浸っていた俺を急速に現実に引き戻す。
気づけばもう日は暮れかけていた。窓の外には夕焼け空が広がっている。
亜紀はもう窓際にはいなかった。台所に立って、冷蔵庫の中を丹念に調べている。
「んー、キムチラーメンとか」
真っ赤な夕暮れ空をみながら、そうつぶやく。
亜紀は困ったように微笑して、
「こんな暑いのに、わざわざそんな熱いもの食べるの?」と問いかけてきた。
「それでも食べたい」
まるで駄々をこねる子供のような台詞で返事をすると、「しょうがないなあ」という声が聞こえてきた。
その返答を聞いてまんぞくし、食事ができるまで一眠りしようか、とその場にねそべる。
「ねえ、清」
目を閉じたところで、亜紀の声におこされた。