35年くらい前、中学生の時、念願だった試合のビデオテープを手に入れた。

私の中ではこの試合がワールドカップ史上最高の試合の1つだと思っている。

 

ブラジルvsフランス (1986FIFAワールドカップ準々決勝)

1986/06/21 メキシコ・グアダラハラ ハリスコスタジアム

 

ブラジル vs フランス

1-1(PK 3-4)

 

ブラジル

1 カルロス

4 エジーニョ

13 ジョジマール

14 ジュリオ・セザール

6 ジュニオール

17 ブランコ

15 アレモン

18 ソクラテス

19 エウゾ

7 ミューレル

9カレッカ

 

フランス

1 バツ

2 アモロス

4 バチストン

6 ボッシ

8 テュソー

9 フェルナンデス

10 プラティニ

12 ジレス

14 ティガナ

18 ロシュトゥ

19 ストピラ

 

会場はメキシコ第2の都市、グアダラハラ市のハリスコスタジアム。標高が1500mくらいある。

ブラジルはここまで4試合をすべて無失点で勝ち上がっていた。

 

初戦のスペイン戦と2試合目のアルジェリア戦は1点しか取れなかったが、その後の北アイルランドからは3点、決勝トーナメント1回戦のポーランドからは4点を取って、だんだんと調子を上げてきていた。

 

1982年の黄金の4人からはトニーニョ・セレーゾが代表から外れ、ファルカンも本調子ではなく、ジーコも左ひざのケガで途中出場、先発はソクラテスだけとなっていた。

ストライカーのカレッカが好調でここまで4点を記録していた。

 

一方のフランスは、初戦のカナダ戦に終了間際のゴールでなんとか勝利し、ソ連と引き分け、ハンガリーに快勝して、決勝トーナメントへ。1回戦の相手はイタリアだったが2―0で下した。フランスもここまでの失点はソ連戦のロングシュートによる1点だけだった。

 

試合は正午にブラジルのキックオフで試合開始。3分にフランスの右サイドバックのアモロスのロングシュートでこの試合の打ち合いが始まる。アモロスは11分にも枠内にミドルシュートを放った。

 

ブラジルは14分にソクラテスがフリーになりシュートを放つもフランスGKバツが防いだ。このあたりからブラジルのパスが繋がりだす。16分に中盤でダイレクトパスを4本通し、最後はゴール前のフリーのカレッカへ。カレッカの強烈なシュートがフランスゴールに突き刺さり、ブラジルが先制した。

 

25分にアモロスのクロスにロシュトーが飛び込み、GKカルロスともつれるが、ゴールにはならない。この時間帯はフランスのパスが通りはじめる。

 

32分、ソクラテスからのロングパスがカレッカに渡り、カレッカがゴールライン付近まで持ち込んでクロスを放り込み、ミューレルの強烈シュートはゴールポストを直撃する。

 

40分、フランスは中盤でティガナ、ジレス、アモロス、ジレスとつなぎ、右サイドからロシュトーがクロスを入れ、GKカルロスとストピラがもつれて、ボールがこぼれたところをプラティニが難なく押し込んでフランスが同点に追いついた。前半はこのまま1-1で終了。

 

 

後半3分、ジュニオールのミドルシュートがゴール枠内に飛ぶがGKバツがパンチではじく。スタンドからは度々「ジーコ、ジーコ」とジーコを呼ぶ声が聞こえる。

 

4分、角度の無いところからのフリーキックをソクラテスが直接狙うもバツがかろうじて防ぐ。

 

19分ティガナがブラジルのパスをハーフウェイラインあたりでカットし、そのまま中央をドリブル突破し、GKと1対1になるも防がれる。その直後のブラジルの攻撃で今度はソクラテスがポストになって、走りこんでくるジュニオールが強烈なシュート。GKがパンチで防ぐ。

 

25分ソクラテスから右サイドのジョジマールへ、ジョジマールのクロスをカレッカがドンピシャのヘディングシュート。ボールはクロスバーを直撃しゴールの外へ。

 

その直後にミューレルに代わってついにジーコを投入。投入直後にブラジル自陣でフランスのボールをカットした左サイドバックのブランコがジーコにパス、ブランコはそのままフランスゴール前に駆け上がり、その足元にジーコからの右足アウトサイドからのスルーパスが通ったと思った瞬間、GKバツがブランコを倒しPKとなる。

 

最初にペナルティスポットにボールを置いたのはキャプテンのエジーニョだったが、その後ジーコが自分が蹴ると言ってボールを置いた。

 

これまでジーコは公式戦で3回しかPKを外したことは無かったそうだが、ジーコのキックはGKバツに防がれてしまう。

 

31分フランスはドリブルで駆け上がったボッシが強烈なシュートを打つがカルロスがかろうじてセーブする。

 

36分ジーコとカレッカのパス交換でフランスゴールを脅かすが、バツが防ぐ。

 

38分ソクラテスの長いサイドチェンジからジョジマールへ、ジョジマールのクロスにジーコがフリーでヘディングシュートをするもGK正面。

 

後半終了直前にペナルティエリア内、ゴールエリアの角のあたりからジュニオールがフリーでボレーシュートを放つがボールは大きく枠を外れた。試合は延長戦に。

 

 

フランスのキックオフで延長前半がスタート。

ブラジルは、ジュニオールに代えてシーラスが入る。

 

延長前半4分、ロシュトーがセンターサークルのあたりからドリブル開始。中央突破で3人を抜き去り、ペナルティエリア内でシュートするがブラジルディフェンスがブロック、こぼれ球をフリーのストピラがシュート。これもブロックされる。

 

8分、フランスはロシュトーに代え、ベローヌを投入。

 

14分、クロスをソクラテスがヘッドで狙うがGKバツの正面だった。フランスは防戦一方でかなり疲労の色が濃い。

 

延長後半10分、右サイドからアレモンがペナルティエリアにギリギリ入ったあたりから強烈なミドルを放つが、バツが防ぐ。その後のコーナーキックのこぼれ球をフランスが拾い、プラティニにボールが渡る。プラティニはダイレクトで前方のベローヌへスルーパス。オフサイドラインギリギリを抜け出してフリーになったベローヌとブラジルGKカルロスが1対1になる。カルロスはペナルティエリアの外側でベローヌに体当たり。ベローヌは体制を崩しながらもゴールへ向かっていたので明らかな反則だったが笛は鳴らず。

しかし、ベローヌより一瞬早くブラジルのディフェンスがボールに追いつき、ボールをキープ。そのままタッチライン沿いをドリブルで駆け上がる。テレビ画面の下側で、プラティニが主審に抗議しているのが見える。現在ではレッドカード当然のプレーだがイエローカードさえ出なかった。

 

一方ブラジルは、そのままフランス陣内にボールを運び、低いクロスを上げる。ゴール前でソクラテスがフリーとなっていたが、ソクラテスの右足は空を切った。

この試合最大の盛り上がったシーンだった。

そのまえのGKの体当たりにスタジアムがまだ騒然としている中、延長後半が終了する。

 

 

PK戦になった。ブラジルの1人目はソクラテス。ソクラテスはワンステップで蹴るような独特のキックをするのだが、ゴール左上に飛んだ強いシュートをGKバツが左腕で防ぐ。

 

フランスの1人目はストピラ。ゴールの正面に決める。

 

ブラジルの2人目はアレモン。ゴール右隅に決める。

 

フランスの2人目はアモロス。ゴール右隅に決める。

 

ブラジルの3人目はジーコ。さっきと同じ方向に蹴って決めた。

 

フランスの3人目はベローヌ。左足で蹴った低いシュートは右のゴールポストを直撃。ブラジルGKカルロスも同じ方向に飛んで倒れたところにポストから跳ね返ったボールが当たり、ゴールに入る。

 

ブラジルの4人目はブランコ。左足でゴール左へ決める。

 

フランスの4人目はプラティニ。シュートを浮かせてしまいゴールから大きく外れる。大喜びするブラジルのサポーター。頭を抱えるプラティニはこの日が31歳の誕生日だった。

 

ブラジルの5人目は、ジュリオ・セザール。テレ・サンターナ監督は「ジュリオ、思いっきり行け、正面に蹴ってもお前のキックなら大丈夫だ」と言ったらしいが、ジュリオ・セザールは左隅を狙った。右足で放った強烈シュートは左のゴールポストに直撃し大きく跳ね返る。

 

フランスの5人目はフェルナンデス。GKの逆を突き左隅に落ち着いて決めた。

 

 

こうして120分を超える試合は終わった。終始優勢に進めていたブラジルが運にも見放され、メキシコを去ることになった。あのときジーコがPKをもし決めていたらというのは誰しもが思っただろう。そして準決勝で西ドイツvsブラジルだったらどうなったのか。フランスはこの試合で全力を尽くした感があり、準決勝の西ドイツ戦で敗れた。

 

 

この試合のビデオテープは100回以上は見たかもしれない。何度見てもあの時の興奮がよみがえり、中学生のころの自分に戻れるような気がする。

1986年ワールドカップ準々決勝ブラジルvsフランス まだ見たことのない人はぜひ見ていただきたいと思います。