夜をゆく
例えばの話
長い長い時間をかけて
卵からかえって幼虫になって
何年も何年もかけて
少しずつ少しずつ大きくなって
暗い暗い土の中で
幼虫からサナギになって
春も夏も秋も冬も
何度も何度も通り越して
毎日毎日
大きな声をふりまきながら
明るい青い空を飛び回る夢を見て
そしてようやく
今日私は外の世界に飛び立つの
と決めて
広い広い地上を目指して
上へ上へ掘り進んで
それで
それで
土を掘り進んだ先が
硬い硬い
コンクリートだったら
私はどうしたらいい?
どうしたらいい?
生まれてから
何年も何年も
何年も何年も何年も
夢見てた青い空は
一度も見れないで
この暗い暗い湿った土の中で
この硬い硬いコンクリートの下で
しんでいくとしたら
私はどうしたらいい?
だれを恨めばいい?
コンクリートを敷いた人間?
そこに私を産み落とした親?
運が悪かったで片づけられてしまう
私自身の人生?
暗闇の中で
何を想うだろう
暗闇の中で
だれを想うだろう
夜をゆく 夜をゆく
夜明け前
瞼の裏に焼き付けたはずの
あなたの横顔が
この頃なんだかぼやけて見えます
この頃なんだかぼやけて見えます
いつもやさしく笑ってくれた
あなたの笑い声が
この頃とても遠くで聴こえます
この頃とても遠くで聴こえます
あんなに楽しかったはずの
あなたとの思い出が
この頃なんだか思い出せずにいます
この頃なんだか思い出せずにいます
たくさんたくさん流した
しょっぱい涙の味を
この頃少し忘れてきています
この頃少し忘れてきています
これでいいのでしょうか?
これでいいのでしょうか?
私は前に進めるのでしょうか?
私は前に進めるのでしょうか?
あなたの声を聴かなくても
あなたの横顔が見えなくても
私はうまくやっていけるでしょうか?
私はうまくやっていけるでしょうか?
別れはいつも突然に
私の大切な人を
みんなみんな消し去ってしまう
あの日サヨナラをして
私はあなたと
二度と二度と逢えなくなった
それでも
もう一度 もう一度だけでも
会いたくて 声が聴きたくて
前
前に進みます。
いくつかのサヨナラを交わして
ぼくは前に進みます。
あの子がぼくの前からいなくなった
何年か前の今日。
その何年か後の今日に
ぼくは前に進むことにしました。
偶然かもしれないし
運命かもしれないし
もしかしたら
嘘かもしれないし
でも
ぼくは前に進みます。
いくつかのサヨナラと
ほんの少しの寂しさと
たくさんのありがとうを抱えて
左手に黄色色の花束をもって
ぼくは前に進みます。