あんたらなんで出来ないの？！

歌ってレガートで歌えば

実はすごい簡単なのよ！È facileeee!!!! とほくそ笑んで叫んだのは

マリエッラ・デヴィーア

聴講したマスタークラスでの彼女の一言。

母音を同じ場所で繋げるのよ、なんで出来ないのよ？と口酸っぱく言ってました。

なんで冒頭にデヴィーアを出したかと言うと

昨日のコンサートがまさに、ある意味そうだったから。

　ヴェルディ生誕地のパルマで9月下旬から行われるヴェルディフェスティバルの一環で、パルマ近郊のフィデンツァのマニャーニ劇場にアマルトゥブシン・エンクバートがリサイタルするから僕行くんだ、とプラートの有望な若手バリトンが教えてくれて、あ！あのなんて読むか難しい名前のバリトン爆ね？モンゴル🇲🇳の人だよね？と言うことで、急遽チケット🎫をオンラインで予約して行って来ました✨✨

プラートから🚗でちょうど2時間。

マニャーニ劇場、実は20年前にわたし

フィガロの結婚の伯爵夫人役で出演したことあるんです。

L’Opera と言う批評マガジンですごく好評を頂いた思い出のプロダクション。

ガイジン、黄色人種に非常に厳しかった時代の話。

劇場入りした時はすでに舞台装置が入っていたので

気がつかなかったけど

すごい綺麗なテアトロ

私こんな素敵な劇場で歌わせて頂いたんだー！

因みにフィガロ役は今度新国立劇場のウィリアム・テルの主役で出るゲジム・ミシュケタだったんです！彼のデビューでした！

テアトロ内部

ため息が出るくらいの美しさ

入り口でチケット🎫を見せて

プログラムを頂く。

は？(￣▽￣)ちゅーくらい

恐ろしく難しいプログラム

後半のオペラアリアなんて

有名どころから超難曲のオンパレード！

これ全部一人でやるんかい

ライトが消えてエンクバート登場

断髪式を終えて着物から背広に着替えた新親方みたいな←失礼w雰囲気の今年38歳。オペラリアとかカーディフのコンクールを獲ってから世界中で活躍する彼。でも生活の拠点はモンゴルらしい。

私は初めて生で聴くし、初めて生で見るので分かんなかったけど、痩せたかも！という声を聞く。

第一部はヴェルディの歌曲からチョイスされた6曲

歌い出してすぐ気づいたのはこの人はイタリア人かと思うディクションの素晴らしさと、半端ないレガート歌唱！柔らかなブレス、全く息が上がらないし、歌い終わった場所からまた柔らかな声で歌い始める！

どれも素晴らしかったけど、出色の出来はオペラアリアを彷彿させるL’esule 逃亡者, Non t’accostsre all’urna 墓に近寄らないで、ディナーミクが完璧だったBrindisi 乾杯、二部のオペラアリア大会に繋ぐ終わり方でした。

休憩を挟んでのアリアはルイザミラー、二人のフォスカリ(!) みんなバリトンが死ぬほど喉が上がる椿姫をなんと3曲続けてエンクバートは歌いました

なんかオーディションや世界的なコンクールの本選かよみたいなスタミナ！

ジェルモンのアリアの装飾音をピアノでちょークリめアに歌える人、初めて見ました。最初の2小節でバリバリの説得力に目も耳も離せなくなり、後から楽譜見て納得したけど、これヴェルディの指示はdolcissimo やピアニシモばかり！朗々と声を響かせるバリトンが多い中、彼はものすごい楽譜に忠実！2回あるDio m’esaudì のクレッシェンド、con forza でも絶対に押さないフォルテからのピアニシモでのDio m’esaudi … いつの間にか頬を涙が伝っていました。素晴らしいカデンツァの後で、雷のような拍手とBRAVOOOOOOの嵐！この人すごすぎるんですけどっ！

ピアノ独奏の後のラスト3曲は

ナブッコートロヴァトーレー運命の力という

ヴェルディファンにはたまらない選曲！

ナブッコのDio di Giuda はレチタティーヴォから！難しいことで知られるアリアはほぼ完璧なレガートで歌われ、続くカバレッタO prodi miei, seguitemi では、リズミカルな歌唱、フレージングもまさにイタリアン。でもこんなに難しいプログラムだし、勇気くれる合唱もいないし( トロヴァトーレのマンリーコのアッラールミーーーーーのシチュエーションみたい笑) 上には流石に上げないかなと思った瞬間、柔らかいアタックをかけた声でAndiaaaaaaaam と高いAS を決めたから、観客は狂気乱舞！

Sei un grandeeeee アンタは偉大だー！と叫ぶ人多数！

トロヴァトーレ、運命の力もばしっと決めて、こんな難しいプログラム歌いきったし、時折咳もしてたから←全く声に支障なし！流石にアンコールはないかなと思ったら、客席からマクベス！のリクエスト🤣

ニヤリと笑って、ピアニストが弾き出した前奏は

リゴレット！そうだ彼はリゴレット歌いだった！笑

リゴレット出して来たからもう終わりだよね、これ以上歌わなくていいよ、次の仕事あるしとコーチ的な考えが浮かぶ中、I pad でアリアを選ぶ彼。

選んだのはエルナーニのo verdì anni.

コンサートでは滅多に聞かないカバレッタで

なんと！またAs を決めた彼🤣😝

暴れん坊将軍での松平健が成敗！と言った瞬間に出てくる二人のタイミングみたいな感覚で出された最後のアクート。支えのスピードがすごかった！

ここでもsei un grandeeeeeeeeeの嵐🤣🤣

こんだけ歌っても全くぶれないし、常に息と繋がってるから当たり前だけど疲れないし、言葉もめちゃくちゃクリアだし、エンクバートが歌うと全て簡単に聞こえてしまう。

冒頭に書いたデヴィーアの、歌は実は簡単なのよ！が頭に浮かびました。

こんだけ歌えたら楽しいだろうなあー！しかも、超美声に生まれてしかも技術がハンパなく素晴らしいから、彼は今ルドヴィーク　テジエの後継者と言っていいかも。

アンコールの最後はリクエストされたマクベス！

今回歌わなかった曲は

まだ歌っていないと記憶してるヤーゴとフォードのアリアと、今回のリサイタルでは歌わなかったサンフランシスコで歌ってきたばかりの仮面舞踏会のEri tu !

ほぼヴェルディの王道レパートリーは聞いたことになります。

いやー、すごい人を聴きました！

ロビーに出てくると聞いたので、待ってサイン✍️してもらいました！

行って良かったです！

VIVA VERDÌ !!!

お客様の中にはエンクバートのリサイタルの後

18時からのパルマのレージョ劇場でのフランス語版のマクベスを観に行く人もいました。

タフというか、どっぷりヴェルディな日曜日なんだなー

アマルトゥブシン・エンクバートAmartuvshin Enkhbatリサイタルに思う