カルシウムイオンってなに?
カルシウムイオンが骨格や歯の構成成分として大切なミネラルであることは御存知の通りです。しかし、カルシウムイオンが血液の中にも含まれており、血液の健康をも司っていることを御存知でしたか? 人の体の血液は、弱アルカリ性(pH7.35~7.45)に保たれている時が健康な状態です。この血液の健康な状態を保つのに必要なミネラルが、カルシウムイオンなのです。
更に、カルシウムイオンが人間の体の中でどのように活躍しているのかをご紹介しましょう。
1.神経の興奮を鎮める働き
カルシウムイオンが不足すると、神経が異常に興奮しやすくなり、イライラしたり、痛みを感じやすくなったりします。しかしその後カルシウムイオンを補充して満ち足りてくると、気分は平静に戻り落ち着いてくるばかりでなく、忍耐力・持久力も出てきます。その理由は、カルシウムイオンが神経の情報伝達で重要な働きをしているからなのです。だから、カルシウムイオンが不足して神経に情報が伝わりにくくなってくると、老人ボケを起こしやすくなったりします。
2.筋肉の収縮に必須
心臓の拍動や胃腸の蠕動運動、消化液の分泌には必須です。カルシウムイオンが不足すると、筋肉の運動が低下するので、心臓や胃腸の働きが悪くなります。だから便秘には、先ずカルシウムイオンの補充です。
3.血液を健康な状態に保つ
カルシウムイオンは血液を弱アルカリ性にもっていきます。もし血液中のカルシウムイオンが不足すると、ケガなどで出血した時、血が固まりにくくなります(凝固作用)。白血球を正常化し免疫力をアップするには、カルシウムイオンの補充が最適です。
4.酵素の働きを活発にする
カルシウムイオンによって酵素の働きが正常活発であれば、体に必要な栄養分を豊富に取り入れることができます。酵素の働きにスイッチを入れて始動させるのはカルシウムイオンです。
5.ホルモンの機能を活発にする
逆に不足すれば、女性の生理機能に異常をきたしたり、血糖値を下げるインスリンが出にくくなったり、消化液の分泌が悪くなります。ホルモン・バランスを整えるには、カルシウムイオンが必須です。
6.免疫系に作用して、病原菌に対する抵抗力を高める
カルシウムイオンが満ち足りていれば、免疫力が強いため、病気に罹りにくく、罹っても早く治りますが、もし不足すれば、血液中の白血球の働きが悪くなる為、体内に侵入してくる病原菌に抵抗する力が弱くなります。
7.腸内の善玉菌を増強する
カルシウムイオンは胃酸、胃液、腸粘液、汗等の分泌過程をコントロールし、腸粘膜から分泌された粘液は腸内細菌の栄養源になります。
8.細胞分裂の過程や、特に受精をコントロールする
カルシウムイオンが満ち足りていれば受精、妊娠は成就しやすいのですが、不足すると不妊や生理不順、生理痛を起こしやすくなります。特に分娩時、子宮口の筋肉が硬い場合、カルシウムイオンを補充すると難産を回避できる傾向が高くなります。
以上のようにカルシウムイオンは、私達の健康な生活を送る上で欠かせない働きをしていることをおわかり頂けたと思います。
しかし、現代日本人のカルシウム不足が、マスコミなどを通じて言われ続けていることも御存知のことと思います。例えば、国民栄養調査では、他の栄養素は所要量が充分なのに、カルシウムだけが所要量に届きません。殊に若い方は、日常生活でカルシウム不足を意識することはあまりないかも知れません。それは、あまり意識しないだけのことで、症状が出ていないというわけではありません。
老若男女を問わず、体の不調を感じている方は、今一度カルシウムというミネラルを基本に、ご自分の体を見直してみてはいかがでしょうか。
神戸大学名誉教授 藤田拓男著
『カルシウム その基礎・臨床・栄養』より
人の体というのは良くできたもので、たとえカルシウム不足があろうとも、血清カルシウムを維持するために、副甲状腺ホルモンが分泌されて、骨からカルシウムを取りだすようにできている。即ち、軟部組織や細胞内という本来カルシウムの少ない所でカルシウム濃度を増加させてしまうのである。
そこで出てくる問題が、年を取るに連れてこの上記の傾向が強くなって、老化による続発性副甲状腺機能亢進症を起こすことである。更には、骨のカルシウムが減少する骨粗鬆症の他に、高血圧、動脈硬化、老人性痴呆、糖尿病、免疫異常、悪性腫瘍等、加齢に伴って増加する多くの疾患の背景となっている。
この為中年期以降は、厚生労働省の掲げる600mgより高い目標量を想定した方が良いといえる。加齢に伴う続発性副甲状腺機能亢進症を主としたカルシウム代謝の異常を改善することは、これら多くの成人病、生活習慣病の予防と治療につながるわけである。
加えて、上記の病気を含め人の病気は細胞の病気であり、すべての細胞の病気は細胞内カルシウムの増加を最終共通経路としていることがわかっている。だから、生活習慣病はカルシウム欠乏症であり、必要充分なカルシウムの摂取は健康と長寿への道であるといえる。