最近、すこし意気消沈する出来事があって、


テンションが下がっていた。


若いときなら、大いに悩むことだろうが、中年のふてぶてしさか、外見は何も変わらない。


いや、客先で謝罪するとか、平然としていることが害になるような


そういう時には、大げさなほどに恐縮してみせたりもするが。


己のことならば、平然と沈黙して、内心を見せないのが常だ。




いろいろ、テンションが下がるようなことがあっても、


精神的に血を流すような事があっても、いつか、かさぶたができ、元通りの精神状態にもどる。


それがわかっているから、仮に動揺するようなことがあっても、


あわてて、傷口をひろげるような愚は犯さない。


精神的なかさぶたができるまで、それまでの間を、なんとか無難にやりすごす。


若造の時にはできなかった、中年のしぶとさだ。





そんな、意気消沈する中で、名言にであった。


正確にいえば、再会した。


いや、2ちゃんとかでよく出る名言だ。


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やり直せよ、未来を。



「10年後にはきっと、


せめて10年でいいから


もどってやり直したいと思っているのだろう。



今やり直せよ。未来を。




10年後か、20年後か、50年後から


もどってきたんだよ今。」


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私は、基本的に2ちゃんは好きではない。


しかし、この言葉を見たとき、2ちゃんにしては、よいことを言うと思った。


私がこの言葉を2ちゃんで見たのは、かなり前だった。


あのときは、私的にひどい時代だった。




この言葉は、どん底の私を勇気づけた事柄の一つだ。


私は、当時、30代前半。


いつか書くこともあるかもしれぬが、私のおかれた立場は、ギャグとしか思えないような。


それだけに深刻なものだった。


当時私は、人事部の三顧の礼に応える形で転職したつもりだったが、


防衛本能の強い先輩技術者の政治力(要は泣き落とし)により、


あっという間に、社内棄民の立場に転落した。誰も味方はいなかった。





あのときは、転職を決断した己を悔やみ、


前職のメーカー勤務時代を懐かしみ


君が必要だと、無責任な弁舌を弄した人事部の人間に歯ぎしりし、


実力もないのに防衛本能だけは強い技術者と、


技術的な真贋より、人間関係の強弱のみを問題にする社風を憎んだ。





10年前に戻りたい、いや、いっそ学生時代に戻りたい。


そんな事ばかり考えていた。





夢も見た。


高校、大学の入学式、メーカー新入社員時代の夢を、何度も見た。


あの頃にもどり、転職後のアホらしくも、深刻な状況をリセットしたかった。





そして、いま。


10年経った。


めぼしいIT資格は片端から取得し、、


技術士(情報工学)まで取得した今。




「今やりなおせよ。未来を」




の言葉を励みに、あほらしい状況からの脱出を目指した、この10年が過ぎた今。


私は、自分の心に聞いてみた。




「10年前に、戻りたいか?」





No!




10年前にもどって、やり直すべきことは、何もない!





いや、私より、才覚のある人間ならば、よりよい人生を得たかもしれないが。


少なくとも私は、10年前に戻って、やり直すことは何もない。




30代前半の状況を、与件として受け入れるならば、


今、40代のこの状況は、最良に近い。


それは、私を荒く扱った相手に復讐したとか、そんな不毛な話ではない。


それは匹夫のやることだ。




そうではなく。


技術者として社内棄民であった過去や、これからも発生するであろう「凄い技術者たち」の挑発や嫌がらせ。


それらを、私は、超克したということだ。


そして、意外と私の支持者や味方も、多いと言うことに気づいたということだ。




恐れるべきは、追いつめられたと感じる己の弱い心だった。


技術士の称号を得た私には、かつて強固な包囲網だと感じたモノが、


実体のない、幻のようなものであると、看破できるようになったのだ。




今の私は、私より遙かに劣る技術者から、逆に私の方が偽の技術者だと挑発されても、


端末を取り上げられ、サーバとの間に人のバリケードができても。


便所そうじしか使い道のない奴と言われても、


幹部の、朝のあいさつが馬鹿野郎だけであっても。


なんでこんな奴を人事は入れたのだと、無関心層を含めた全社員から口々に叫びたてられても。





そんな低レベルな嫌がらせは、あっさり黙殺できる。論ずるに足らん。


昔の私は、なんでこの程度のことで、ダメージを受けていたのだろう。


淡々とした態度を保ち、黙殺を心がけたが、どもり、手が震える時期があった。


やはり、昔の私は、精神力がひ弱かった。


としか、言いようがない。


技術士となった今、真の意味で、そんな状況を黙殺できるようになった。





いや、もう直接的には、私を貶める発言する奴は、いなくなったが。







私は、この10年、努力して、その結果を得た。


そして、次の10年への目標も立てている!


10年前の私は、未来をやり直したのだ。


成功したのだ。





そして今。


10年後の私が、過去にもどってきた今。


私は、10年後の未来を、やり直す。





次の10年、私は、博士号を手に入れているだろう。


そして、おそらく、社長になっているだろう。


今もそうなりつつあるが、私は賞賛と尊敬を受ける立場になっているだろう。


その立場を利用して、さらに社会貢献し、深い満足感を得ているだろう。


そして、家族に、幸せな人生をプレゼントし、幸福に包まれることだろう。


そうなるよう、私は、未来を、やり直す。





絶対にだ。