再び螺旋階段を駆け上がる、一人分の足音が時計台の中に響き渡る。
下方では、新星とshibaが戦っているからなのだろうか、鋭い金属音が何度も鳴り続いている。
もう俺は後には退けないだろう。
この階段の先にあるものなどわかりもしないのに。
どうしてここまできたのだろう。
そもそもシスターレイとは何なのだろうか。
そんなものを起動してまで防ぎたいものとは何なのだろうか。
そんな事を堂々巡り、考えているうちに、階段の終わりが見えてきた。
天窓からの光がまぶしく、数秒俺の視界を遮った。
視界がだんだんそれに慣れてくると、ぼんやりとそこの風景がわかりだした。
―――――・・・、眉毛君なの・・・?―――――
不意に、脳に直接響いてくるような、クリアな声が聴こえて来た。
そして、視界が完全に可視出来ると同時に、俺は目を疑った。
「・・・、コバルトか?どうしてそこに・・・?」
コバルトは壁に磔になっており、両手首、両足首は光でできたような帯で固定されている。
どうしてコバルトが・・・、まさか・・・。
「そう・・・、眉毛君が思っている通り。私がシスターレイ。『無影』って言うんだ」
『無影』・・・。コバルトも恐らく、新星や俺のように妙な力を持っていると言う事なのか・・・。
「『無影』はその射程範囲にいる標的すべてを消滅させる力、その影さえも消し去るの・・・」
そんな・・・、コバルト自身がシスターレイだなんて・・・。止める方法は・・・。
コバルトの意志で止めるか、コバルトを倒すか。その二択なのか・・・。
「本当はね、新星君が止めにくるかと思ったんだけど、予想外だったよ。
でも、おかげで言いやすくなったよ。お願い、私だってこんな力使いたくないの・・・。
私を止めて、自分の力じゃどうしようも出来ない。だからお願い。
私を倒して!!」
コバルトの悲痛な叫び、心優しいコバルトの本音がそこにこぼれた。
しかし、それと同時にコバルトの前に二体の機械生命体が黒い光と共に現れた。
一体は盾を両手に持ち、どっしりと構えている。
もう一体は両手で二メートル弱はあるだろう巨剣を持っている。
「これは私の『無影』の一部、護衛システムみたいなものなの。
私の意思に反して私を守ろうとし、その敵を排除するの・・・」
巨剣を持ったほうの護衛と目が合う、それと同時にそいつは俺目掛け大きく飛び出した。
「うおっ!!」
思わず横に跳ねたが、俺がいたところにかなり重量がある巨剣は振り落とされた。
ズシン、と地響きがし、そこの床には大きな亀裂が入っていた。
洒落にならんな・・・。反撃に出るしかない・・・!!
すぐさま『白鶴』を具現化し、見えない矢を放つ。
光の矢は巨剣の方目掛け飛んでいく。
しかし、盾を持っていた護衛システムが俺と巨剣の間に割って入った。
そして持っている盾で俺が放った矢を防ぎ、矢は光の粒となって消えた。
どうすんだよこれ・・・、巨剣の一撃は危険すぎるし、攻撃は盾に防がれる。
不利・・・!!圧倒的不利・・・!!
もう時間もあまりない・・・。こんな小さい矢じゃ盾で防がれる・・・。
矢を具現化できるなら・・・。もっと大きな矢を具現化できるはずだ。
俺は目を閉じて、体の中にあるこの力の源が、どこを巡っているのかを探す。
こうしてみると、とてつもない心地よさが体の中にあった。
そしてそれを自分を思うままにコントロール、そして自分の右手に集中。
まだだ、まだこんなものじゃ足りない。
より大きく・・・、より強く・・・!!
・・・、今だ!!
目を見開き、巨剣を持つ方へその矢を放つ。
すると、今までの矢のサイズとは何十倍、いや百倍以上の大きさの光の矢が飛んでいく。
再び盾を持つ方が割ってはいるが、それは光の矢に飲み込まれ、後方にいる巨剣すらも巻き込み、消し去った。
「はぁっ・・・!はぁ、はぁ・・・」
ものすごく体がけだるい、俺が放ったあれは俺の気かなにかなのだろうか。
「ありがとう・・・、あとは私をその矢で撃つだけ・・・。早く、もう時間がないよ・・・」
俺がここまでして止めにきたものは何だったのだろうか。
目の前にいる少女一人を殺すために俺はここまで走ってきたのだろうか。
それ以外に俺がここまで来た目的を果たせる方法は他にないのだろうか。
破壊の力、それが『無影』だったら。
それを本当の意味で止める方法は破壊じゃない。
もっと優しい、浄化なんじゃないのだろうか・・・。
俺にしか出来ないこと、それはまさしく。
浄化なんじゃないのだろうか。
だからshibaは俺を行かせたのじゃないのだろうか。
新星じゃなく、俺を。
再び目をつぶり、呼吸を整え、『白鶴』を天に掲げた。
そして右手で弦を引き、矢を天に向かって放った。
「眉毛君・・・、まさか、『無影』自身を・・・?」
そう、俺は破壊の力、『無影』を壊すんじゃなく、浄化し、元に還す。
「『無影』が・・・、消えてく・・・」
『無影』の消滅と同時にコバルトを壁に磔にしていた光を帯は消え、コバルトはゆっくりと床に足をつけた。
いや、違う。消えたんじゃない。
「『無影』はコバルトに還したんだ」
俺がそう言うと、ほぼ同時に、学園側が出したシスターレイ起動の時間と同時刻になった。
止めたんだ・・・。俺はシスターレイを止めたんだ・・・!!
―――――――――――――――――――――――
「どうやら、終わった、みたいだな」
「そう、みたい、ね・・・」
一方下の階では新星とshibaが戦っていたが、シスターレイの還元と同時に二人とも動きを止め、その場に倒れこんだ。
「結局よぉ、決着、つかなかったな」
新星は床に大の字になりながら、shibaの剣で出来た切り傷から血を流しながら言った。
「ま、判定があるんなら、私の勝ちでしょ」
shibaは床にうつ伏せになり、顔は新星のほうへ向け、やはり血を流しながらそう言った。
「言ったな・・・?次はあるかどうかわからんが、今日はもう終わろう」
そう言って、ゆっくりと新星は立ち上がり、自分の眼下に倒れているshibaに手を差し出した、
「あぁ、そうしようか、もうくたくた・・・」
差し出された手を掴み、立ち上がりつつ、shibaはそうつぶやいた。
――――――――――――――――――
「結局『無影』で消そうとしたものってなんだったんだ、なんかロボとかいたけど・・・」
俺はあの後、自分の力じゃ一歩も動けない程に疲れ果ててしまい、
今は情けないことにコバルトに肩を借りて、さっきまで駆け上がってきた螺旋階段を下りている。
「さぁ・・・、私にはわかんない。けど、『無影』がなくなったのと一緒くらいにその気配も感じなくなったよ」
・・・、一体どういうことなんだ。
まぁ、いいや。今は早く家に帰って、風呂に入って寝たいよ・・・。
でも、左を見ると、コバルトの顔がすぐ近くにあった。
その表情は、なんだかすっきりしたような表情で、俺も頑張ったかいがあったさ。
しばらくはこの顔を見てるのも悪くないな・・・。
来る時は長いと思った階段が、帰るときは、少し短く感じた。
「ハーイ、カットォ!!」
終わった・・・。
なんだかんだで終了したシスターレイ編。
一応、落ちましたからね・・・?
今日はオフだから暇です。
今から、エタブレのところに行きます。
んじゃまた。