母はコーヒーの好きな人だった。
母と言っても育ての母で、厳密には祖母なんだけど。
私が生まれてすぐから育ててくれた人なので、
わたしにとっては母で間違いない。
母は毎朝、パンとコーヒーだった。
私はというと、おむすびにお茶。
朝起きると、いつも台所はコーヒーのいい香りが漂っていた。
いい香りだなとは思うんだけど、
なぜか私は昔からコーヒーが苦手で。
砂糖やミルクを足せば甘くなるんだけど、
どうも好きになれないのはなぜなのか(笑)
年を重ねた今でも、友達とお茶するときは
紅茶かジュースを選んでいる。
コーヒーの苦味や酸味が、あまり好きじゃない。
BBAになっても子供舌なのは我ながら克服させたいんだけどなぁ…。
毎朝、母の写真に「おはよう」と話しかけ、
夜は「今日も1日見守ってくれてありがとう」と手を合わせる。
その生活が始まった1年目は、ほぼ毎日
母の好きなコーヒーを淹れて供えていた。
ただ、私自身がコーヒー苦手なもんで、
供えたあとに飲むのがちょっとキツくなってきて
いつからか供えなくなってしまった。
あれから数年経ち、ふと
母がコーヒー飲みたがってるんじゃないかと思った。
そうよね、毎朝欠かさず飲んでたのにね。
まあ厳密には飲めないし(笑)、
私の気の持ちようなんだけども。
というわけで先日、ドリップコーヒーを買った。
酸味のあるものが好きだったのか、苦味が強いものが好きだったのか、今となってはわからないけど
とりあえず中間のものを買った。
翌朝、湯を沸かし、台所下の奥底に追いやられていた
ずっと母が使っていたWedgwoodのコーヒーカップを用意。
ドリップをセットしてコーヒーを淹れた。
ワンルームの部屋に、昔嗅ぎ慣れた香りが充満する。
めっちゃいい香りだなぁと、しみじみ思った。
砂糖とミルクを入れ、母の写真がある場所へ。
ちょっと甘いと言ってるかもしれない。
ごめんね、私の好みになってるわ。
香りの記憶はすごいなぁと思う。
香水でも、たまに街ですれ違った人がつけてる香水が
昔自分と関わった人がつけていたものと同じだったら
その瞬間、その頃の記憶がはっと思い出されるときがある。
数年ぶりに、部屋中に広がるコーヒーの香りを楽しんでる自分がいる。
こっちの気持ちひとつだけど、
なんとなく喜んでくれてるかな。
しらんけど。
しばらくして、ちょっと飲んでみた。
やっぱり砂糖多かったな。甘っ。
これから、たまにはコーヒー淹れますわ。
そして少しづつ飲む機会が増えれば、私もコーヒー好きになるかもしれない。