不自由な僕の自由な日記
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いつも夏だった

8月31日

夏が残した最後の日だった

僕たちは海へ行った

哀しい横顔

濡れた靴

言葉が無力だって知ったのも

たしか夏だった

無気力な時代の夏だった

伝えなきゃいけないこと

伝えたいこと

たくさんあって

すべて伝えたくて

伝えられなくて

だから生きていける

もっと伝えなきゃいけない

僕がたいせつに感じること

僕が哀しく感じること

この場所

どこにでもある場所に

どこにもいない僕がいる

僕がまだ若かったころ

目に見えない真実をさがしていた

目に見えない自由をさがしていた

あれから何年もたったいまでも

僕はこの場所にいる

創造

苦労して創ったものに

面白さを感じない

馬鹿な奴が

笑いながら創ったものに

面白さを感じる

言葉では言えない


おやすみ

中途半端な夢をみていた

夜中に目が覚めた

真夜中の甲州街道

窓の外にはしんしんと雪が舞っていた

すべてがうまくいかない

気の利いたセリフが欲しかった

好きだったあの子のキスが欲しかった

なにもかもがうまくいかない

また眠るしかない

見上げる月は

あの子の口に似ている

おやすみ

ぼくは知っている

いらいらしている人

偉そうにしている人

ぼくは知っている

子どもの頃から知っている

自慢する人

過去の栄光を見せる人

ぼくは知っている

君が偉そうに語ること

ぼくは知っている

誰も知らないくだらないことを

タンポポ

悲しみと喜びが

まじりあう音を聞きながら

死んで生きたい

とても遠くの国の

水の流れる音を聞きながら

死んで生きたい

揺れるたんぽぽの黄色を

指で確かめながら

死んで生きたい


砂漠の関係者

夜がくれば

君に朝がやってくる

地平線の先には一枚の風景画


何が悲しいのか

明日がこないこと

広い砂漠では

自分の言葉が無であること

大きな夢

大きな男になりたい

この夏の空を

大きな手で抱きしめたい

あのニューヨークの少女の

小さな夢を

大きな手で抱きしめたい

メキシコの女性

ローマの少年

日本の学生

たくさんの人を乗せたバスを

大きな手で抱きしめたい

しあわせな夏の朝に夢を見る

かなわない夢ではない

かなえようとする夢

盲目の紳士がバスの運転手

大きな男になりたい

記憶

子どもの頃の記憶

僕は右の目が不自由だった

何をするにも恐かった

失敗するのが恐かった

大人になって

眼鏡をかけるようになった

何もかもが鮮やかに映った

美しくないものまで

美しく思えた

眼鏡があっても

恐いことがある