★★★★

1. IN THE MOMENT
2. 砂時計 featuring Che'Nelle
3. NYC‐TYC featuring JOEL ORTIZ, MoNDoH, KID CAPRI, A‐THUG, ED WEATHERS, J-STATUS
4. 大時計 featuring Baby M
5. DREAM SKIT
6. LOVE featuring 中澤信栄
7. PG-18 featuring KARIBEL
8. QP SCARS featuring QP, STICKY, BES
9. OCEAN BLUE
10. FLY featuring KARIBEL, TENZAN
11. GIRLS featuring Che'Nelle, 林鷹
12. 黙る時代は終わり featuring FRED DA GODSUN, SALU
13. YOU AGAINST THE WORLD featuring KARIBEL

SEEDAのニューアルバム。2011年9月発売。

今作が二度目のメジャー流通作となるシーダだが、作品の内容としてはインディー流通の前作以上に濃いものとなっている。
客演陣に歌詞のトピックス、どちらも幅広くなった印象だ。
現在EMIで売り出しているChe'Nelleが2曲参加していたり、その内の1曲はなんと生粋のハーコーラッパー林鷹もラップで参加しているなど、中々カオスな作品だ。

本作でシーダが思い描いている音楽へのビジョンがなんとなく見えてくる。M-3や8といった日米混合のマイクリレー曲や、ブラックミュージックがルーツである女性シンガーの起用からは、「言語関係なく日本人にラップを楽しんでもらいたい思い」や「より黒人音楽に慣れ親しんでもらいたい思い」がくみ取れる。

ただ彼の思い描いているスケールの大きさが、作品の枠に収まりきっていない感も拭えない。
本作はHir0shimaが全てのトラックを手掛けているのだが、トラックのクォリティが高いのは分かるが果たしてシーダにとってベストなビートなのかと言われると、今まで共に作品を作ってきたI-DeaやBach Logicの方が耳馴染みが良いと感じてしまう。

ミックスの問題なのか分からないが全体的に膜がはられたようなのっぺりした音で、歌詞を聞かそうとするシーダののっぺりしたラップと相まって良さが相殺されている印象の曲が、個人的に何曲かあった。

しかしラップに関してはメジャーでよく許されたなとしか思える鋭利なものも多く、M-6のアウトロでは「原発を続ける為に俺は税金なんて払いたくねぇ」と最早直球すぎる怒りをぶつけたり(ホントによくメジャーで許可が下りたものだ)、そもそもメジャーのシステム自体にも牙をむけるM-13のラップなど今作もメッセージ部分でも大いに楽しませてくれる(多少修正が入っているが以前記事にしたDABOのような改悪はされていない)。流行歌を褒める常套句に「等身大の歌詞が魅力的」と言うのがあるが、そう言われる曲の歌詞は等身大と言うよりも単にありきたりな言葉を並べているだけで本来の意味で等身大の歌詞を発し続けているアーティストはシーダのような人の事を指すのだろう。

とは言っても彼の中で自己完結してしまっている歌詞の曲が、今作でもいくつかあり、「大人になれば自由が手に入ると思い込んでいた子供の頃の心境」を、風景描写を巧みに織り交ぜながら歌うM-7等はもう少し分かりやすくラップしてもらえればより多くの人に聞かれた名曲に成りえたのでは、と思う。(それでも僕が好きなことには変わりは無いわけだが)

そして折角のメジャー復帰作だと言うのにいまだにミュージックビデオの一つも上がらないし、発売直前の頃も一切メディアでの宣伝が無かったのは如何なものか(情報源は彼のブログのみだったと言う人が殆どではないだろうか)。お陰で今作は初週の売り上げが3000枚という散々な結果だ。
作品のスケールがメジャー級になろうがそれを世に広めようとしなければ存在しないも同然だ。
僕はシーダが少なくともクレバと売り上げを争うようなアーティストになるべきだと思っている。次作もEMIとサインしているようなので今度は万全の態勢でプロモーションしていただきたい。折角のシェネル参加も宝の持ち腐れだ。

IN THE MOMENT/SEEDA

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SEEDA『瞬間-IN THE MOMENT』