感染症の歴史は生物の発生と共にあり、有史以前から近代までヒトの病気の大部分を占めてきた。医学の歴史は感染症 の歴史に始まったと言っても過言ではない。1929年に初の抗生物質であるペニシリンが発明されるまで根本的な治療法はなく、伝染病は大きな災害と捉えられてきた。

その後の微生物学.免疫学.薬理学.内科学.外科学.公衆衛生学の進歩を背景として感染症の診断.治療.予防を扱う感染症学が発展しつつある今日でも、世界全体に目を向けると感染症は未だに死因の約1/4を占める。特にマラリア.結核.AIDS.腸管感染症は発展途上国で大きな問題であり、感染症学のみならず保健学.開発学など集学的な対策が緊急の課題である。

先進国においては新興感染症 .再興感染症に加えて、多剤耐性菌の蔓延やバイオテロの脅威が公衆衛生上の大きな課題として注目を集める一方、高度医療の発達に伴って手術後の患者や免疫抑制状態の患者における日和見感染が増加するなど、日常的にもまだまだ解決に向かっているとは言えない。

キンゼイ報告によれば近親者の性的虐待の体験率は5.5%、父親または義理の父親によるものは1.0%である[6]。キンゼイは思春期開始の年齢を上限としていた。しかし、この調査報告は統計学的に不適切な点が多く、疑問視されている。

また、1978年にはアメリカのカリフォルニアでダイアナ・ラッセルにより調査が行われた。それによると近親者による性被害率は女性が18歳までで全体(N=930)の約16%[7]である。そのうち4.5%が父親で、残り12%が別の肉親である[8]。この調査は女性に対する近親姦の全体16%のうち3分の1近くが父親によるものであることを示す[9]。だが、同時に気をつけなくてはならないのは3分の2以上が他の肉親によるものであるという点である[8]。

一方、男性に対しても同様の調査は行われている。大学生を対象にしたデイビッド・リザックらの1996年の調査報告では男性の近親者による性被害率は16歳までで全体(N=595)の3-4%である[7]。

日本では1972年、五島勉が著書『近親相愛 』でアンケート調査を発表した。その結果女性1229人中4.7%が実際に行為に至った、もしくはギリギリまで進んだと報告された。しかし、これはほとんど話題にされなかった。

また、精神科医の斎藤学が1993年に過食症の女性患者52名、比較群の健康女性52人に行った調査がある。その結果、健康女性の2%、過食症の女性患者の21%が18歳までに接触性近親姦の被害に遭っているという調査結果が得られた[10]。

石川義之は1993年に大学・専門学校生を対象に調査を行ったが、非接触も含むと女性の12.3%が近親姦 被害に遭っており、うち5.7%が父親によるものであった。

生物学者が近交弱勢と呼ぶように近親姦で子供が生まれた場合、その子供は遺伝的疾患や死を催しやすい。近親交配においては、夫婦が共通の祖先を持つため、その両者が同じ種類の劣性遺伝子をペアとして共有する可能性が高くなる。優生学上は両親から同一の遺伝子をもらった場合のみにその形質が現れる遺伝子を劣性の遺伝子、どちらか片親からその遺伝子をもらっただけで形質に現れる遺伝子を優性の遺伝子という。近親交配を繰り返した場合には両親が同じ劣性遺伝子を持つ可能性が高くなる。そのため、劣性遺伝子という形で隠蔽されている、障害をもたらしたり致死性のある遺伝子が症状として顕在化しやすい。近親姦 でない場合はたとえ片方に特殊な形質に関する遺伝子があっても、もう片親にはそれを打ち消すような優性の遺伝子がある場合が多く、その形質が子供に現れることは少ない。血友病を持つ人物が同じ遺伝子を持つかもしれない自分の兄弟姉妹と親密になって子供を作り、そしてその子供が血友病にかかっているという事例が中世ヨーロッパで見られた。

人類学者の中には、生物学を近親相姦畏避の研究に入れることに批判的な意見がある。近親交配が良い結果をもたらすことも想定できるため、近親交配の嫌悪の根拠を生物学的に求める事はできないとする。例えば骨格異常の遺伝子は優性形質であることが多いなど、障害をもたらす遺伝子が必ずしも劣性であるとは限らない。さらに、望ましい形質が頻度の低い劣性遺伝子に基づいている場合もある。その場合には、その遺伝子のホモ接合型によってその良い形質を顕在化して固定する効果があるために、近親交配が有効な手段となる。ただし、そのような近親交配の長期的な正の効果が顕在化するには、偶然や例外的な環境、あるいは畜産等の人為的な選択管理、などによるデメリットの回避が必要となる。

このため、近親交配が自然界で普通でなく、そして繁栄している生物種がそれを回避する心理的メカニズムを持っていることは意外ではない。例えばウェスターマーク効果など人間界でも近親相姦の嫌悪は一般的である。今のところ、認識心理学上の親族認識については未だ定説が確立しているは言いがたい。また、それがどの程度文化的圧力によって左右され得るかについても研究理解は不十分である。多くの研究結果は、人間の近親相姦 嫌悪を理解する上で進化生物学及び人間の心理学が中心的役割を果たすことを示している。