この頃には、どうにかフライトに乗せてほしいという気持ちと
今日も乗れなかったらどうなるんだろうという気持ちと
職員の人が言っていた「確実にフライトが取れるのは6日後です」という言葉が
頭の中をぐるぐる回っていて、
一体この先どうしたらいいんだろうという不安な気持ちだった。
同じようにスタンバイしている外国人達は、
一体何時になったら名前が呼ばれるんだとか、
自分達は小さな子供がいるから優先的に乗せてほしいとか
どのくらいの確率で今日飛ぶことが出来るんだとか、
とりあえず、職員の人にありとあらゆる質問を浴びせていた。
日本人の人もそれなりにいたけど、外人の人達に比べると質問は少なくて
どちらかというと、職員が発表するまでじっと待つ、という感じだった。
外人たちのやり取りを聞いていると
今の段階で、80人の枠に180人が待っていること。
でも、ぎりぎりまで待ってみないとまだ本日分のチケットを持っていて
チェックインをする人がいるかもしれないので、実際に80人が乗れるかは分からないこと。
日本人よりも外国人が多分優先されるであろうこと。
などが分かってきて、ああ、状況はかなり厳しそうなんだ、と思った。
そばにいた日本人のご夫婦も「多分今日もダメでしょう」と言っていた。
いよいよアメリカンの職員のお姉さんが、リストを持って私達の前に現れた。
私達は、一斉に彼女を取り囲み、彼女は名前を読み上げ始めた。
がしかし。
お姉さんは思いっきり日本語読みの発音で、
付近の外人たちは一斉に what? what? what ? と不満をぶつけ始めた。
しかも、ものすごく声が小さいので何と言っているのか聞こえない。
拡声器、拡声器を持ってきてくれ!メガホンでもいいから!と本気で思った。
あまりに声が聞こえないので、近くに行きたいけど、
荷物を積んだカートを一緒に持っていた私は、人混みに近寄れない。
困っていると、近くにいたさっきの日本人のご夫婦が
荷物を見ていてあげますよ、と親切に言って下さったので、
そのご夫婦のお名前を聞いて、呼ばれたらお知らせしますと言って
私は人混みの中に突入していった。
お姉さんの日本語読みと言うのは、
例えばMichaelと言うのを「まいける」と呼んでしまう感じだった。
外人には「マイコー」と言わなければ伝わらないのだ。
「むむむむむ」と不満を募らせた外人達が「リストを見せろ!」と交渉するも、頑なに拒まれる。
そこで「スペルを言え!」と外人達がリクエストをすると、あっさりとOKがでる。
彼女がスペルを読み上げた後、
周囲の外人達が「まいけるじゃなくて、マイコーだ!」と分かると
みんな一斉に「マイコー!マイコー!マイコーいるか!」と大声で叫び始める。
めでたくマイコーがが名乗り出ると「おお、おめでとう!!」と拍手が湧き上がる。
でもそれも、最初の2,3人だけだった。
何故か名前を読み上げても、誰も名乗り出ないことが多く、
アメリカンのお姉さんも「あれ?」とか言っている。
徐々に「間違ったリストなんじゃないのか?」という疑いが一面に広がり始めていて
「どうなっているんだ?!」的な雰囲気が充満していた。
誰も返事をしない名前が呼ばれ続け、2,3人呼ぶと
またさっき呼ばれたのに出てこなかった人の名前を再度呼んで確認、
という作業が続くので、時間をかける割に全く先に進まない。
ディミトリスは、お姉さんの肩越しからリストを覗き込み
必死に自分の名前を探していて、その様子がかなりウケた。
ほぼ、お姉さんの肩に顔が乗っている感じで「いくらなんでも顔が近すぎるだろ」と思った。
あまりに声が小さくて聞こえないという、外人達からの不満が爆発し
途中で声の大きな男性職員が代わって名前を呼ぶことになった。
名前を読み上げるAA職員の方。
その左肩には、相変わらずリストをのぞき続けるディミトリス(笑)
でも結局、名前が呼ばれて無事にチェックイン出来たのは、10人もいたかな?という感じだった。
今日の分はこれで終わりだ、と言われた時には皆、明らかに失望の色を隠せなかった。
両方の手のひらを上に向けて、肩をすくめてる外人とかいた。
私もダメだとは思っていたけど、それが現実となると結構がっかりして悲しかった。
ディミトリスはなんと奇跡的に名前が呼ばれ、無事に乗ることが出来た。
上司から早く帰ってくるように言われていて、今晩乗れないと大変なことになると言ってたので
名前が呼ばれた時は、遠くからでも相当に喜んでいるのが分かった。
(テニス選手がサービスエースを決めた時みたいなガッツポーズが見えた)
時間は既に20時過ぎていたと思う。困った。
でも、毎日指折り数えて楽しみにしていたアメリカ旅行。
どうしても、どうしても行きたかった。
明日の便に乗るにはどうしたらいいか、アメリカンの人に聞こう。
そう思って、またカウンターに並んだ。

