AAが安く提供してくれるという、空港そばの某ホテル。
T急系の、聞いたことのある名前のホテルだった。
ご飯もほとんど食べていなかったけど、不思議とお腹もすかなかった。
割り当てられた部屋に向かう前に、とりあえず売店でビタミンウォーターとアイスを買う。
部屋に着いたら、まずはシャワーをしてゆっくりしたかった。
空港で過ごした2日分の汗を流して、それから世の中は一体どうなっているのか
テレビのニュースがみたい、そう思っていた。
でも。
気がついてしまった。部屋に着いた途端に気がついてしまった。
このホテル、ものすごい古ーーーーっ![]()
空港はザワザワとしていたし、常に周りに人が沢山いた。
警備員の人が常に見回りをしていて、一人だとは言っても、誰かが守ってくれる気がしていた。
でも、ホテルの部屋に入って一人になってみると
余震のたびに壁から聞こえるミシミシという音に、あっというまに怖気づいてしまった。
なんかこのホテル、傾いてそう・・・
何かあったら一目散に逃げたいと思っているのに
この日に限って「8Fの通常より広いお部屋を用意致しました」と言われてしまう。
いや、狭くてもいいから2F希望です、と心から思った。
揺れるたびに、クローゼットの木のハンガーがカタンカタンと音を立てるのが怖くて、
音が出ないようにハンガーを外してしまおうと思ったのに、
盗難防止なのか、ハンガーは取り外せないようになっている。
仕方がないから、ハンガーの一つ一つの間隔を最大限に空けて
揺れてもお互いがぶつからないようにしてみたけど、効果はあまりなかった。
いざという時のために、ドアに貼ってある避難経路の地図を見て指差し確認もした。
そしてとりあえず、シャワーをする。
するけど、その前にふと考えてしまった。
もしもシャワーしている時に大きな地震が来たら?マッパで逃げる?
いやいやいやいや、それは露出狂。
ここはシャワー中に大地震が来て避難することが無いように、祈るしかなかった。
ゆっくりと浴びたい気持ちを我慢して、高速で仕上げた。
小学校の先生が、いつも地震が来てドアが開かなくなると困るから、といって
教室のドアを常に開けていたことを思いだして、
バスルームを使う時は絶対にドアを閉めないようにした。
シャワーが終わったら、パジャマではなくて、Gパンをはいてパーカーを着た。
スーツケースも荷物をまとめておいて、無理だとは思うものの
すぐに荷物をまとめて部屋を出られるようにした。
空港にいるよりもずっと怖かった。
壁を含め、部屋全体は薄暗かった。ムードのある薄暗さとは全く違った。
すこし、気味が悪かった。
とりあえず、インターネットにつないで家族に連絡をした。
その間も、ずっと壁はミシミシと音を立て、ハンガーはカタカタいっていた。
別の音を立てれば気にならないかもしれないと思って、
ずっと見ることが出来なかったテレビのニュースをつけてみる。
最初にフジテレビを付ける習慣があるので、8を押す。
するとベテランアナウンサーの安藤〇子さんが中心になって特番が放送されていた。
安藤さんは、物凄く興奮気味に話していた。
中継をしている人の発言さえもさえぎっていた。
あまり要点のないことを、ひたすらまくし立てているので、
その周囲をかき乱す感じが、余計に私の心を落ち着かなくさせる。
こ、こわい。急いでチャンネルを変えた。
今この8Fで大地震があって、建物が崩れたりした場合私はどうなるんだろう。
ベランダのガラスが割れて下に落ちるのか、それとも瓦礫に埋まるのか?
でも、昨日のあの激しい揺れだって耐えた建物なんだから大丈夫なはず。
そう思っても、あまりに軋む壁に囲まれて、不安で仕方がなかった。
とりあえず、Facebook にメッセージをくれていた友達に返事をしたり
ツイッターでみんなのつぶやきを読んだりして、気持ちを落ち着けていた。
友達のコメントなんかを見ていると、それぞれの様子が伝わってきて
みんなとつながっている気がして、少し気持ちがラクになった。
そんなこんなでオドオドと過ごしていると、友達から一通のメールが届いた。
仲良しの飲み仲間、Kご夫妻。
一緒にホームパーティーをする、お料理の上手な、
そして来る人みんなを温かい気持ちにする、とてもいいご夫婦。大好きなご夫婦。
多くを話さなくても、楽しい気持ちも辛い気持ちも、全部わかっていて
それを丸ごと包んでくれるような、優しい二人。
「大丈夫?Facebook を今見て驚いています。
もう向こうだと思っていました。
成田に昨夜は缶詰だったんだね。落ち着けてればいいですが。。。
もし引き返すなら途中で迎えに行くからいってくださいね」
私はこのメールを読んで、涙がポロポロと出てきてしまった。
奥さんのCちゃんは、待望の赤ちゃんをさずかり今は妊婦さんでお腹が大きい。
この地震で色々精神的のも辛いだろうし、Kさんも心配だろう。
それなのに、大田区から車で迎えに来てくれるなんて。
もちろんそんなことは申し訳なさ過ぎて頼めない。
でも、そうやって心配してくれる人がいるんだっていうことが、心の底から嬉しかった。
何て優しい二人なんだ、と思ってびっくりした。
一人で、余震に怯えて気持ちが落ち着かなくて、怖くて仕方がなくて
それでも気持ちを強く持たなくては、と思っていた時にこのメールを読んだので
前日から張りつめていたものがプツンと切れてしまって
自分でもびっくりするくらい、涙がずっとポロポロとこぼれていた。
ありがとう、怖いけど頑張りますと返事をすると、返事が来た。
「被災地の姿を見ると本当に心が痛いです。
一人で怖いと思うけど、大丈夫だからね。
本当に戻るつもりがあれば行ってくださいね。
ご飯はちゃんと食べれてるでしょうか。
なにかあれば連絡ください。返信は不要です」
そんなこと、メールで言われた方はどうしようもないだろうと思いつつ、
つい弱音を吐いて、言ってしまった。
すごく怖くてどうしたらいいか分からないです。
余震のたびに部屋が大きな音を立てて軋むのが怖くてたまらないです。
「大丈夫。
大丈夫だから携帯の充電と動ける体制だけ整えて体を休めてね。
大丈夫だからね。」
メールで二人にそういってもらって「そうか、大丈夫だ、大丈夫、大丈夫」
と何度か口に出して言ってみると、きっと大丈夫なんだ、という気がしてきた。
そして、言われた通り携帯を充電しなくては!と思った。
怖がってないで、出来ることを今しておかなければいけないんだ、と思った。
一日目の、寝袋で寝た夜も辛かったけど、
ホテルでの二日目の方が、ずっとずっと精神的にきつかった。
家族や友達に会いたい、顔を見たい、と本気で思っていた。