初めて尾瀬を訪れたのは

お盆過ぎた頃だった

 

ちょうどお盆の時期から2週間くらい

季節の花に乏しい時期だった

 

木道の端に

まだ蕾をつけていない野草

これから色つくところの緑色の木の実など、

鮮やかな色は見当たらなかった。

 

夫の仕事の知り合いの女性は

その後から度々尾瀬に誘ってくれた

 

秋口になると急に色付き始める草種、

動物のものかげ

高く抜けるような透き通る空…

 

この地上に

このような場所があるのかと

驚くばかりの自然の造形美だった

 

初めてのショッキングな出来事を払拭するように

 

来る度に色を塗り替える風景

ガラリと変わっていく空気に

子どもたちは飽きることがなく

楽しい思い出に塗り替えていくことになった。

 

その頃からだろうか…

長男の目の動きが収まりだしたのは…

 

小刻みに1ミリくらいの振幅で常に揺れている目が

瞳をこちらに向けた瞬間

一瞬だけれど、ピタッと止まっていた。

 

一歩出て、

ふらふら不安定に後ろに下がることもなくなった

 

時々よろけて、木道から落ちそうになるが

 

意識を前に向けて

心の中に目標を定めることで

まっすぐ前に進めることができた

 

そして、心理的にも同じように

目標をつくり、

そこに進んでいく姿勢をつくっていったように思う。

 

尾瀬の空気は澄んできて

訪れるたびに体内のガス交換をし

新鮮な何かに入れ替えて

カラダの細胞がつくり替えられていくようだった

 

不思議と下界では雨が降っていても

出かける、と決めると

尾瀬に近づくにつれ、青空が広がっていった。

 

 

 

今でも車中から眺めるあの青い空を忘れない。