1週間の出張から帰ってきてトラ猫トラニャは明らかに態度が変わっていた。
声のトーンが高くなり、寂しかった・甘えたいという
気持が強く伝わってきた。
ところが、シャムにはそんな様子が見られなかった。
シャムはもともと感情表現が控え目だったが、
それでも以前はしっかりと気持を伝えてくれていた。
2年前の出張の後はそれがはっきりと分かった。
以下は、2年前の記録である。
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夜ふと目覚めると、シャムがわたしの顔を
まっすぐに見ていた。
わたしの腕にすっぽり収まって、ごろごろと
のどを鳴らしている。
わたしが目を開くと、礼儀正しく目をそらした。
目を開けるとシャムの顔、というのは珍しくない。
お腹が減って、起きて欲しいときに、
顔をのぞき込んでヒゲでくすぐったりする。
このときは少し感じが違った。
何かを要求する風ではない。
けれど、眠かったわたしは、特に考えず、
また眠りに沈んだ。
それからどれくらい時間が経ったか分からない。
ふと目を開けると、やはりシャムがわたしの顔を
まっすぐに見ていた。
ゴロゴロのどを鳴らす深い響きが続いている。
このときも、シャムは丁寧に視線をずらした。
それからもしばらくまどろんで、
夢と現実を往復したのだけれど、
その間ずっとゴロゴロという響きと視線を
感じていた。
シャムは、他の二匹ほど派手に感情表現しないけれど、
わたしが帰ってきたことをしっかりと喜んでくれている
気持ちが伝わってきて、とても温かな気持ちになれた。
いい子だね、長く留守にしてごめんよ。
時間が時間なので、口には出さなかったけれど、
そういう気持ちをこめてゆっくりと
シャムの背中をなでた。
こうしてお互いの気持ちが通い合うのを感じていると、
その気配を察したトラニャがホニャーと
声を上げながら乱入してきた。クロも体をこすりつけてくる。
お前らもカワイイぞ!
そろそろ食事の時間でもあるな。
ポンと軽くシャムの背中を叩いて、わたしは身を起こした。
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今回の出張から帰ったとき、
シャムは眠っていて気が付かなかったし、
その後2週間、ベッドに来ることすらなかった。
すねているのかというと、そんな感じさえない。
認知症だから仕方ないのだろうか。
わたしが長く不在だったことさえ
もしかしたら気づいていないのだろうか。
(続く)