トラ猫トラニャは、最低身分猫だった。
うちにいた3匹の中で
いちばん若く、いちばん弱く、いちばんおバカな彼は
飼い主に甘える序列でもいちばん下だった。
ベッドで甘えることなど許されるはずもない。
だが、時は過ぎ先輩2匹は世を去った。
トラニャは、オンリーワン猫として
好きほうだいできるようになったはずだった。
でもトラニャは、ベッドでいちばん良い場所に来ない。
飼い主の腕に抱えられて密着できる
ベストポジションに来ない。
そこはかつてのボス猫、
誰よりも美しく誰よりも強く誰よりも賢く
そして誰よりも優しかった、シャムの場所だった。
その場所は永遠にシャムのもの、なんて
猫が思うんだろうか?
分からない。
でも、トラニャはいちばん良い場所とは知りながら来ない。
トラニャは、シャムの居場所を避けて、
わたしの肩口に身を寄せる。
トラニャがその場所を避けることが
死んだシャムのことを思い出させるのが
さいしょは少し辛かった。
時が経ち、
トラニャが肩口に陣取ることで
シャムを意識することが、
まだほろ苦く寂しいけれど、
うっすらとシャムの存在を感じられる気がして
少し心あたたまる思いがするようになった。

