「今を ひたすら走り続けていられる / もっと先にあなたはいるのでしょう」
「凛」作詞:松本有加 作曲:坂村文 編曲:坂村文. 「-RIN-」(D:POP RECORDS, c1999. DHC-7)収録


 世俗の歌の中に、主なる神を見てしまう。そんなヲタクリスチャンが気になる歌を紹介したり、しなかったり。


 以下の文章は、本当は徳永愛というアイドル(?)の引退ライブの感想として書いていたものなのですが、あれこれ考えているうちに表に出すタイミングを失ってしまったものです。もう、2年前のことですか。。。
 未だに未完成なのですが、本人が再始動するようなので、記念に上げておきます。ってか、なげーよ。



 徳永愛、という名前をご存知の方はほとんどいないと思いますが、この方はどうしても最初に取り上げておかなければならない。わたしが自覚的にオタクでいようと思ったきっかけであり、わたしの人生という暗い路を照らし続ける灯火のひとつだからです。

 昔、プレアイドルという言葉も知らない頃、会社の先輩にプレアイドルの合同発表会へ連れていってもらったことがありました。
 たくさんの少女たちが、入れ替わり立ち替わりステージを披露していくのですが、そのなかでも振り付けの表情がひときわ豊かな少女がいました。
 私は、その振り付けやステップをもう一度見たい、いや、二度でも三度でも、と彼女のイベントへしばしば足を運ぶようになりました。

 清水夕紀美、というその少女はほどなく本名である「徳永愛」を名乗るようになりました。あとから知ったのですが、彼女はすでに幾多のステージを駆け抜けてきた百戦錬磨の強者だったのです。(詳しいことはgoogle先生にお尋ねください。)

 アイドルは、基本的に容姿やトークのかわいらしさを売る仕事だと思いますが、彼女は自他に対する厳しい姿勢が災いしてか、毒舌で(笑)、トーク下手でした。しかし一方で、その誠実さにひかれたファンも少なくないはずです。

 実は、徳永愛はCDデビューをみずから白紙に戻したことがあります。
 多くの場合、プレアイドルは他のアイドルの曲をカバーしてステージをつくっていたので、オリジナルの曲をもらうのは大変なことなんだなぁ、と思っていました。
 そんな環境で、徳永愛はオリジナル曲によるCDデビューが決まりました。多くのイベントでファンへの報告も進んだころ、他の曲をメインにしたほうが好ましい、ということになり、デビュー曲の変更が決まりかけました。しかし彼女は、自分らしさを表現出来るのは元の曲である、として変更を拒否し、CDデビューは白紙に戻りました。
 彼女の、愛するものへの真摯さ、自他ともに対する厳しさをうかがい知ることが出来るエピソードです。彼女の持ち味である、愚直なまでに一途な情熱は、この後もさまざまな人々を動かしていきます。

 白紙になったデビューCDの変わりに生まれた「Love is the Beat」は、まさに彼女そのものといえるでしょう。彼女に提供された楽曲のなかでも、かなり「やんちゃ」な曲に仕上がっています。

「本気で私は 夢追いかけた / 何度もやめようと 思った
/ だけど あなたの 笑顔を もいちど見たくて / 信じた」

「LOVE is the BEAT」 作詞:赤星かずえ 作曲・編曲:鈴木英利. 「LOVE☆LIVE☆LIFE」(WAVE MASTER RECORDS, 2007. FUJI-14)収録

 やがて時代はアイドル市場の縮小、(幾度目かの)声優アイドル化の時代を迎えます。多くの声優たちがソロで、あるいはグループでCDを出し、イベントを催すようになりました。アイドルや歌手を目指す少女たちは、自分の夢をかなえる手段として「声優というパッケージ」を選ぶようになります。(フェイトちゃんとか、長門とか、成功例としてはそのあたりでしょうか)
 徳永愛もその「パッケージ」を選びました。しかし、彼女の本当の目的はライブで歌い踊ること。方針の食い違いなどで、彼女はいくつか事務所を変わり、結局フリーとになります。

 その間にも彼女はCDをリリースしていきます。彼女自身強く孤独を感じていたと語るように、この頃は彼女にとって不遇の時代なのですが、良い歌が多いように思います。こんなときにすら多くの人々が彼女を支えていたことを聴いてとれるのです。また歌声が、以前に比べて格段に強くなったように思います。

「錆びついた情熱の中に / どれほどたくさんの夢を見てきたの?
 走り出せ どこまでも遠く / 輝いた 未来の果てに届くまで」

「Burst」 作詞:徳永愛 作曲:徳永愛・YOFFY 編曲:YOFFY&Kacky

 しかし彼女は、夢に手が届かないのならば自分はここにいるべきではない、とステージを降りました。
 2008年2月3日、「FINAL COMMUNICATION☆1/4 ~FINALE~」。
 大切にしているステージだからこそ、惰性で続けることは出来なかった。自分を裁いてしまった。
 ファンがするべきことは、粛々と彼女の決意を受け止めることでした。

 結果的に声優への転身が足を引っぱった、と思います。一方で、楽曲や人々との豊かな出会いがあったこと、彼女自身の豊かさがいや増したこともまた真実です。なにかを失ったからなにかを得たとか、苦労したから報われたとか、そんな因果応報な見方では語れません。彼女は彼女であり続け、注がれる恵みも試みも受け取ってきたのです。

 ラストライブの最後のあいさつで、彼女は抱えている激しい動揺を伝えてくれました。ステージを愛する気持ちと、愛するものに誠実でありたいという気持ちに引き裂かれ、ファンの「どうしたいの?」という問いかけに「どうしたいかわからない」と答えた彼女でした。
 でも、大丈夫、と思います。たぶん歌い踊ることが彼女へ贈られた「gift」で、それを捨ててしまうことは出来ないと思うからです。もし捨ててしまっても、「gift」の方が追いかけてくる。それは彼女を苦しめるかもしれません。
 そして彼女が自分への「gift」を再び受け入れたとき、彼女は帰ってくる。彼女が愛のために「gift」を捨てたその情熱で、愛のために再び「gift」を受け入れるときを、私たちは待つ。

「喜び 悲しみさえも / 分かち合える 幸せ 信じて 生きていく」
LOVE☆LIVE☆LIFE」 作詞:松本有加 作曲・編曲:KOISHI. 「LOVE☆LIVE☆LIFE」(WAVE MASTER RECORDS, 2007. FUJI-14)収録

追記
 2009年、徳永愛は声優として、再びこの世界に戻って来ました。そして、かもさんのライブステージにゲストとして参加。2010年は"やりたいことが出来る環境に近づけそう"らしいです。wktk

☆2010ねん☆1かいめ!! , レジェンドビートさん ( Heartful ★ Community - Ai's Diary )