「A子のメイクっていつもナチュラルじゃない?」
「A子はメイクしなくても肌綺麗じゃん」
「ナチュラルが似合うから羨ましいよー!」
友達はそう言ってくれる。
私は学校に行く時はほぼすっぴんで、眉毛とリップくらいしかメイクはしない。
遊びに行く時とも、ファンデーションは塗らないし、アイラインも引かないし、マスカラも下地だけ。
メイクがナチュラルなメリットは、仕度の時間を減らせること、メイクを落とす手間が省けることくらいかな。
でもね、本当は一番大きな理由があるの。
〈フルメイクしてこの顔のクオリティか、そうでもないな〉って思われたくないから。
ナチュラルメイクだったら、〈まぁメイク薄いし妥当だよね〉って思ってもらえると思うから。
自分の全力が主人公の寝起きにすら負けるっていう現実を受け止めたくない。
人って無意識のうちに他人と自分を比べて査定してる。廊下ですれ違う時、歩道を歩いてる時、飲食店で店員と客が話す時、snsを見てる時にね。
あの子と自分の違いを探して、優劣をつける。
でも、まず同じ位置からスタートを切らないと勝負ってできないでしょ?
だから、私はスタート位置に立たないの。ナチュラルメイクをして、あえて一歩下がって、相手にフライングさせるの。
フライングしてる人がいたら勝負はチャラでしょ。
勝負ができないから優劣をつけられない。
私とあの子どっちが魅力的かなんて誰も決められない。
じゃあ私があなたに負けることもない。ほら、怖くないじゃん。
このことは友達には言えないけどね。だってかっこ悪いじゃん。