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  武器としての
   コミュニケーション


   高城幸司の会社の歩き方


高城 幸司 : 株式会社セレブレイン社長

2012年10月16日


武器としてのコミュニケーション


仕事をしていく上でコミュニケーションほど大事な武器はありません。しかも、新入社員向けのマナー・あいさつの領域から高度な専門向けの相手の説得する「クロージング」、やる気にさせる「モチベーション」など、高度なレベルまで《広さ》×《深さ》があります。

仕事で必要な専門知識をビジネススキルと言いますが、コミュニケーションはヒューマンスキルと呼ばれ、物事の考え方と一緒ですべてのビジネスパーソンに共通するポータブルなもの。
一度身に付けたスキルは職種や業界が変わろうが使えるといっても過言ではありません(職場の人間関係の把握など、特定の会社内でしか活かせないものも意外と多いですが)。

考えてみればコミュニケーションが不要で自分1人で完結する仕事なんてありません。仕事は、誰かとの連携がなければ始まりませんし、終わることもできないのです。


「自分1人でやる仕事だってあるはず」
と思う人がいるかもしれません。営業なので契約から納品まで全部自分だけでやっている、周囲に相談することなんて1回もない・・・・・・だから自分1人で仕事が完結していると勘違いをしてしまうのでしょう。
でも、考えてみてください。会社は組織です。組織の一員として行動している以上、仕事の始まりと終わりには、必ず連携する誰かが登場します。たとえば、仕事を指示したり、確認したり、承認するために上司、あるいは仕事をシェア(役割分担)するための同僚と連携する必要があります。

そして、一緒に仕事をする人物がいれば、お互いが意思疎通するために必ずコミュニケーションが必要です。何も会話せずに仕事が始まり、終わるということはありえません。
よく「あうん」の関係などと言います。わかり合えれば言葉なんていらない・・・・・・という意味です。確かに、いい仕事が「あうん」の関係でできる上司と部下は存在します。

「私の上司は何も言わなくてもわかってくれる」
すばらしい話です。

あるいは、
「とにかく、君に仕事は任せた」
と、細かい報告はしなくていい・・・・・・という上司もいます。結果さえ出ればいいというマネジメントスタイルなのでしょう。
私の周りにもいました。仕事は結果がすべてだから、そこまでのプロセスにいちいち口を挟まないおおらかな上司。部下にとっては細かい指摘を受けずに済むので、できるビジネスパーソンにしてみれば楽でやりやすい存在でしょう。

ただ、それは「いい仕事」をするために事前にしっかりとしたコミュニケーションを繰り返してきた賜物なのです。仕事上のコミュニケーションを取らずに仕事をしている上司と部下がいるとしたら、それでいい仕事をするというのは間違いなく不可能です。信頼して任せたはずの上司も、結果が出てないと


「もっと詳しく説明しなさい」
「あの仕事はどうなったか詳しく聞かせてもらえるか?」
などと、結局は細かいコミュニケーションを求めます。上司が部下とコミュニケーションをしなくて仕事がうまくいくことなんて基本的にはないのです。

少し脱線しますが、プロ野球で併殺を取る二遊間(セカンドとショートの間)の華麗なプレーを見たことがありますか?
日本であれば中日の荒木雅博選手と井端弘和選手が目もあわせず、ヒットになりそうな打球をダイビングでキャッチ。そこからバックトスでボールを送球してピンチをしのぐ。
すると球場では割れんばかりの拍手。守備だけで十分にみる価値があると言われる両選手(アライバなんて呼ばれている2人)のプレーを楽しみに観戦に来たファンも数多くいると言われます。
そんな華麗なプレーは、まさにあうんの関係で行われています。ところが華麗なプレーをするための事前の練習では、緻密な打ち合わせ=コミュニケーションが前提にあります。


「ここにボールが飛んだら、すぐにベースカバーに入る」
などと、春のキャンプや日頃の練習中に「決まりごと」を決めるために意思確認が繰り返されます。また、併殺が取れた、あるいは失敗した後で 「反省」 「対策」 をするためにベンチで即座に対話がなされます。
そんな始まりと終わりにコミュニケーションをするから「あうん」でいい仕事ができることを覚えておいてください。
さて、併殺プレーだけでなく 「いい仕事」 をするために最低でも始まりと終わりにコミュニケーションは絶対に必要です。


「できれば途中途中での確認もしたいもの」
です。だから仕事の目的・内容・納期に加えて期待していることなど言葉にして伝えて、相手が理解し、やる気になることでいい仕事は実現できます。
そして、スタートした仕事は成果を依頼主(大抵の場合は上司)に「報告する」ことで終了します。仕事はやったが報告はしない・・・・・・のであればやらなかったのと同じです。さらに言えば報告の的確さで仕事ができるorできないが見極められると言い切っても過言ではありません。
このように、すべての仕事はコミュニケーションで始まり、終わります。だからいい仕事をするために最も重要なスキルなのです。


ところがコミュニケーション力の低下した社員が増えています。その理由は?
 1.ネットやメール文化の発達
  →友人同士が利害関係まく横でつながり、
    会話する機会が増えた
 2.少子化、核家族化
  →礼儀が求められる会話を避けたまま、
    社会人になる傾向


などが原因のようです。昔に比べて若いうちに緊張感のあるコミュニケーションをする機会が少ないから、年配の上司と対峙すると緊張する、話し方がわからないのも仕方がないのかもしれません。ただ、それが事実なら昔以上に仕事コミュニケーションを学びスキルアップに励む必要がある、ともいえます。
いっそのこと、社会人になり職場で求められる仕事コミュニケーションとは、日常コミュニケーションと別物くらいに考えた方がいいのではないでしょうか。


ですから、
「業務報告を的確にするコミュニケーション」
「相手がやる気になるコミュニケーション」
を十分に使いこなしていい仕事をしたいのなら、間違っても普段の日常コミュニケーションで適当に対処しないようにしないこと。仕事でのコミュニケーションのルールをしっかりと身に付けましょう。