http://nationalgeographic.jp/nng/article/20150212/435302/




    宇宙&科学

 生まれたての
    4重星を発見!
                国際研究チーム


 多重星ができる過程の謎
         解明のきっかけに



  2015.02.12



四重星系の誕生を示すイラスト。
周囲を取り巻く塵のリングがやがて惑星となる。
(ILLUSTRATION BY NASA/JPL-CALTECH/UCLA)


 天文学者による国際チームが、未来の四重星系が形成される非常に初期の様子を観測、2月11日付の『Nature』誌に発表した。四重星系誕生の様子を詳細に見たのは、おそらくこれが初めて。

 見つかったのは、地球から800光年ほどの距離に位置するペルセウス星団にある、バーナード5(B5)と呼ばれるガス雲。天文学者らは世界最大級の電波望遠鏡2つ(米ニューメキシコ州のVLAとウェストバージニア州のグリーンバンク望遠鏡)とハワイ州のジェームズ・クラーク・マクスウェル望遠鏡を併用し、このガス雲に原始星1つと高密度ガス領域3つが抱かれている様子を発見した。

 これら星の卵は、約4万年で星になると考えられている。天文学的には、ほんの一瞬の出来事である。しかし、4つの星は永遠に一緒にいるわけではないと、研究者は予想する。コンピューターモデルによると、いずれ1つの星が分離し、重力的な結び付きの強い3つが三重星系を形成するという。




B5ガス複合体は約4万年で多重星系になると予測されている。
(PHOTOGRAPH BY NRAO/AUI/NSF)


 今回の論文の共著者である英国マンチェスター大学ジョドレルバンク天体物理学センターのゲイリー・フューラーは、こう述べている。
「この種の多重星系は、宇宙では非常に一般的です。スター・ウォーズのタトゥイーンを想像してみてください。太陽が2つあるでしょう。あれは、現実とそんなにかけ離れていません。実際、すべての恒星のうち半数近くが、この種の星系を形成しているのです」

 地球からわずか4.37光年と、最寄りの恒星であるケンタウルス座アルファ星は、二重星系である。多重星系は私たちの銀河系にふつうに存在するが、その形成過程は長年の謎だった。

 一方で、多くの星が多重星系であることを考慮すると、むしろ私たちの太陽が、今から50億年前になぜ単星として生まれたのか。その誕生の秘密の方が大きな謎かもしれない。惑星の分布から、太陽系が多重星系になったことはないと考えられている。
 新たな発見は、未解読のパズルを解くための重要なピースとなった。


 文=Andrew Fazekas/訳=堀込泰三