めまいの原因と
     危険なめまい



  NHKテキストビュー  6月11日(水)15時0分配信



めまいの原因と危険なめまい

イラスト:平山正子



「めまい」 は大きく3つのタイプに分類され、さまざまな原因で起こる。なかには、命に関わる重大な病気が隠れているケースもある。
適切な治療のためにも、自分のめまいのタイプや考えられる原因について、知っておくことが大切だ。東海大学教授の飯田政弘(いいだ・まさひろ)さんに、めまいの原因と、特に注意が必要なめまいについて教えていただいた。


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■めまいとは
めまいの多くは、体の平衡(バランス)を保つ働きが障害されるために起こります。体のバランスを保つうえで、最も重要な働きをするのが耳です。耳は音を聞き取るだけではなく、耳の奥の内耳(ないじ)で、体の回転や動き、重力などを感じ取ります。
目や関節・筋肉の働きも大切です。目は景色や自分の動きを感じ取り、関節と筋肉は体の姿勢を感じ取ります。

耳、目、関節・筋肉が感じ取った情報はすべて脳に送られます。脳がそれを調整することで体のバランスが保たれます。この仕組みが障害されると体のバランスが乱れ、回転していないのに回転しているように錯覚し、めまいが起こります。

体のバランスの乱れは、臓器の働きを調整する自律神経にも伝わります。そのため、めまいが起こると、吐き気や嘔吐(おうと)を生じやすくなります。


■めまいの原因
めまいの原因は、めまいのタイプによっても異なります。めまいには、大きく分けて次の3つのタイプがあります。


■ぐるぐる回るめまい
自分や周囲が、激しく回転しているように感じます。このタイプのめまいは、主に内耳の病気が原因で起こります。
代表的な病気に、良性発作性頭位(とうい)めまい症やメニエール病、前庭(ぜんてい)神経炎などがあります。まれに、脳の病気でも、このようなめまいが起こることがあります。


■ふわふわするめまい
体がふわふわ浮かんでいるような、またはふらふら揺れているようなめまいです。患者さんによっては、宙に浮いているように感じたり、柔らかいソファーの上に立っているように感じることがあります。
過労や睡眠不足、ストレス、不安などで心身が不調なときに起きやすいとされています。その他、内耳の病気で起こったり、まれに脳の病気が原因で起こる場合もあります。


■クラっとするめまい
クラっとするめまいのほとんどは立ちくらみ(起立性低血圧)です。急に立ち上がったときに、血圧の調節がうまくいかないため、脳の血流が一時的に不足して起こります。
通常は、急に立ち上がっても血圧が下がらないように自律神経が調節していますが、疲労やストレスなどで自律神経が乱れると、その働きに支障を来して立ちくらみが起きます。降圧薬をのんでいる場合にも、血圧が下がり過ぎて立ちくらみが起こることがあります。


■危険なめまい
めまいはさまざまな原因で起こりますが、特に注意が必要なのが、脳の病気によるめまいです。脳の病気は命に関わることもあるため、早急に検査と治療を受ける必要があります。

ただし、脳の病気で必ずめまいが起こるわけではありません。内耳の情報を直接受け取る脳幹や、体の運動に関わる小脳が障害されると、めまいを生じやすいとされています。


■症状に特徴がある
めまいを起こす脳の病気には、脳の血管が詰まる脳梗塞、脳の血管が破れて出血する脳出血、頭蓋(とうがい)内の組織に腫瘍ができる脳腫瘍などがあります。脳梗塞と脳出血は突然発症しますが、脳腫瘍は徐々に症状が現れます。

自分自身でめまいの原因を判断するのは困難ですが、脳の病気の場合はめまい以外にも特徴的な症状が現れます。

例えば、体の麻痺(まひ)やしびれ、激しい頭痛、言葉がうまく出てこない(言語障害)、意識障害といった症状がある場合は、脳梗塞や脳出血が疑われます。特に、どうしても立てない、歩けない、症状がどんどん悪化する場合は注意が必要です。

脳梗塞や脳出血が疑われる場合は、直ちに救急車を呼びましょう。症状が自然に治まった場合でも、再発する危険性があるので、必ずその日のうちに神経内科か脳神経外科を受診してください。
脳腫瘍の場合は、脳梗塞や脳出血と異なり、月単位や年単位で徐々に進行します。異常に気付いた段階で早めに受診することが大切です。


■『NHKきょうの健康』2014年6月号より NHK出版




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  最終更新:6月11日(水)15時1分


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