注目の横綱白鵬(はくほう)との全勝対決の一番。大関照ノ富士(てるのふじ)は敗れて、3場所連続の優勝はなりませんでした。それでも14勝1敗の好成績。念願の横綱昇進を確実にしました。
大けがや病魔に見舞われ、〝もうダメだ、やめるしかない〟と、どん底まで落ち込んでも、そこからまた這い上がってくる力が、人間には残っているんですね。しかも、体には傷が残り、若かった時のような馬力は戻っていないとしても、〝心〟はどん底に落ち込んだ時より何倍も強くなることだってあることも知りました。
千秋楽まで、冷静で、力こもった取り口は文字通り横綱相撲でした。どん底経験も決して無駄ではなかった、失敗が心身ともにたくましい力士にしてきたのではないか。
彼の相撲を見ながら、人生、1回、2回落ち込んでも、またやってみればいい、自分もやれるかもしれない、と感じた人も、多かったかもしれません。
また、ボロボロになった心身を少しずつ癒してくれる力が、時間には潜んでいるんだな、ということも改めて感じました。
横綱になったらなったで大変ですよ。多分。
以前、初代の若乃花さん(元横綱。相撲博物館館長などを務めた方)に話を聞いたとき、横綱に昇進して最初に考えたのが「いつ引退するか」だったそうです。驚きましたが、若乃花さんは「最高位にふさわしい成績を残せなくなったら引退しかない。それが横綱だ」と語っていたことを思い出します。
それにしても白鵬の相撲は、前日の正代(しょうだい)戦といい、見苦しかった。まるでチンピラの喧嘩のようで、気分が悪くなりました。彼に正々堂々たる相撲を求めるのは、もはや無理かもしれません。