大きな相手と向き合うためには、それをうわまわる大きなからだを…。
大相撲界にはそんな神話がいまだ根強くありますが、現実はそう単純でもありません。
9日目の相撲では、194㌔の魁聖(かいせい)が166㌔の北勝富士(ほくとふじ)に押し出され、183㌔の碧山(あおいやま)が、147㌔の宇良(うら)の肩透かしを食いました。189㌔もある千代大龍(ちよたいりゅう)は、154㌔の阿炎(あび)の引き落としにばったり落ちました。
こう見ても、一見有利のように見える巨体が、絶対でないことは明らかです。
それでも、相撲界には「大きなからだを」が、根強くあります。
新弟子が入門してくると、指導者は〝まずからだづくりだ〟と、とにかく食べることを義務付け。「夜中に吐くまで食わされた」などの話が、いまだにゴロゴロ残っています。
そのなかで力士のからだは年々大型化し、今場所の幕内力士の平均体重は約159㌔。
1968年。横綱大鵬(たいほう)が28回目の優勝を遂げ、人気力士貴ノ花(たかのはな=元大関)が十両昇進、新入幕で注目され始めたころの幕内力士の平均体重は130キロ台でした。
当時に比べると30㌔も増えていることになります。
大きな体が激突する相撲は、それはそれで迫力があります。他方で、敏捷な動きが減り、攻防ある相撲、四つ相撲がほんとうに少なくなっています。
小柄な体で入門しても、鍛える中でからだを徐々につくりあげ、技の幅も広げていくという、相撲界独特の力士育成は難しくなっているのでしょうか。
しかし、大きなからだで、ガンガン行け、というだけでは、相撲の魅力は広がらないし、若者を相撲から遠ざけ、愛好者からも見放されてしまいます。
〝大型化神話〟から決別し、多彩な動き、技が繰り出せる力士の育成を。
相撲人気が高い今こそ、取り組んでいく課題だと、自分は思っています。