高安(たかやす=東前頭7枚目)が13日目、大関貴景勝を激しい相撲の末に破りました。
同じ1敗で並んでいた関脇の若隆景が敗れ、ただ一人1敗を守りました。
まだ気は抜けませんが、初優勝に向かって一歩を進めたことは確かです。
以前、オリンピック出場選手が「楽しんできたい」という発言をして、話題になったことがあります。
自分はメダル第一主義ではないので「日本でもそういう発言をする選手が出てきたか」と気楽に聞いていましたが、〝オリンピックに出るというのに、楽しんでくるとは何事だ。メダル獲得が第一だろう〟という強硬な意見が相当ありました。
その論争があってから、オリンピック代表選手から〝楽しんできます〟発言はほとんど消え、最近は〝目標はメダル〟発言がやたら増えているような気がします。
それはともかく、優勝争いを引っ張る高安が最近、「気楽に取る」とよく口にしています。貴景勝を破ったこの日も「気楽にやろうと思った」「明日もリラックスしてやりたい」と繰り返しました。
たいていの力士は、大目標を前にすると「前夜はほとんど眠れなかった」とか、「気持ちも体もガチガチだよ」といいますが、高安はここにきてもリラックス一本やり。優勝争いを前に、最も大事なことを最後までつらぬこうとしているように見えます。
オリンピック選手の〝楽しんで〟発言は、世界の選手と競う大勝負を控えて、高まる気持ちを静め、冷静にたたかうために、自分にいい聞かせようとしたのかもしれません。
高安は大関時代、何度も優勝争いに絡み、何度も失速し、人には言えないつらい思いをしてきました。
ですから今回は、大一番を前に〝調子に乗るな、冷静に行け、及ばなかったら、また挑戦すればいい〟と懸命に自分に言い聞かせている気がします。
オリンピック選手とは少し違うかもしれませんが、共通するものがあります。
千秋楽まで、リラックスした気持ちで相撲を取っていってほしいと願っています。