二週間に一度図書館へ行くのですが、毎回雨が降ります。
「晴れ男」とか「雨女」なんてよく言いますが、本当はそんな人なんていないと思うんですよね。
365日雨が降るわけじゃないですから。
仕事の日に雨が降っていることが多い人と、休みの日に限って雨に降られていると感じている人。
言い換えれば、休みの日は晴れている人、仕事の日は晴れる人です。
要は捉え方の問題のような気がします。どちらに重きを置くかの。
天気は個人の事情には構ってくれません。良かれ悪しかれ。
あぁ、今日も雨ですね。
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・辻仁成『ミラクル』(97’新潮文庫)
・西條奈加『閻魔の世直し:善人長屋』(13’新潮社)
・北野勇作『社員たち』(13’河出書房新社 NOVA COLLECTION)
・皆川博子『影を買う店』(13’河出書房新社)
・恩田陸『雪月花黙示録』(13’KADOKAWA)
こうして見ると新潮と河出が多いことに改めて気付きました。
・辻仁成『ミラクル』(97’新潮文庫)
――僕の名前はアル。ジャズピアニストのパパと南へ向かって旅を続けている。僕はママを知らない。だけど、きっとどこかにいる。いつもどこでも僕はママを探しているんだ―。大人になってなくしてしまったものをもういちど見つめてみませんか?すっかり大人になってしまった、かつての子供たちへ贈る、愛しくせつない物語。あたたかな文と絵でお届けする、優しい気持ちになれる一冊。――
国語の教科書に載っていた憶えが。
ただ、少年と幽霊たちが会話してるシーンしか覚えていません。
その幽霊の名前が面白かった気がして、なんとなくふと思い出したので借りてみました。
そうそうエラソーニだ。偉そうな幽霊のエラソーニと、紳士のダダ・ジョナサン。
話の構成は、雪の降る日にふらりと立ち寄ったバーで、ピアニストのアルという男から聞いた物語、という形。
ページの右側は全部挿絵なので、短い話でした。
設定がまず切なくて上手いです。思わずわくわく、というよりもはらはら、といったような。
子供を産んですぐ亡くなってしまった最愛の妻。彼女のことが忘れられない(認めたくない)ジャズピアニストのシドは、息子のアルに母親のことを訊かれても「ママは忙しくて会えないんだ」と言い張ります。
それを信じているアルは、父親にじゃあいつかママは戻ってくるんだね、と言います。
「いつ? ねえ、いつ戻ってくるの?」
困ったシドは思わず、「雪が降る日だ」と答えてしまいます。
その日から、シドは雪の降らない、暖かい地方への旅を余儀なくされ、アルは雪の降る日を待ち望むようになります。
こういう導入好きです。
それから、アルの目の前にいつしか二人の幽霊が現れるようになります。エラソーニとダダ・ジョナサンです。アルにしか見えないお友達。
二人は「ママって一体なに?」というアルの質問に、「ママは許してくれる存在だ」と教えます。「ママは最後に必ず許してくれる。ママに許せないことはない」と
この幽霊たちは背後霊タイプではないので、気が向いたらアルと遊ぶといった印象です。結構自由です。
とあるクリスマス間近の南の町。シドはこのバーでピアノを弾いているのですが、寂しさを誤魔化すためにお酒を飲み、今やすっかりアルコール中毒。クビにされかかっています。
アルの方はというと、母親というものがわからないものの自分なりに母親探しをします。
許してくれる人を求めて、女の人に「あなたは誰かのママですか」「僕のママじゃないですよね」と訊ね、悪いことをしては「僕を許してくれないの!」と叫びます。
叱られる為にいたずらを続けるアルですが、気味悪がられるだけでやはりママはみつかりません。
約全体の三分の一のページに渡り、アルの奇行は続きます。
そんなある日、アルはキキという同じ年頃の女の子に出会います。
ママを探しているというアルの話を聞いて、キキは言います。
「あなたのママは、たぶんもう死んじゃってるわ」。
キキも父親がおらず、母親にずっと、パパは忙しくて会えないんだと言われていたのだと言います。
「でもある日自然に気が付いたの。どんなに忙しくても手紙すら出せないなんてことある?」
キキにも、キキにしか見えない女の幽霊がいたけど、幽霊に頼らなくなった時から見えなくなってしまったといいます。そして大人の嘘に気付いてやるのが子供の役割で、アルにもいつまでもサンタクロースを信じるような子供のままじゃだめよ、と言い去って行きます。
デウスエクスマキナ的登場なキキ。なんだか、少しこの子だけ浮いているように見えました。
クリスマスの朝。なんと南の町に雪が降りました。
アルは大喜びでママが帰ってくる、とはしゃいでいます。
シドは動揺しながら仕事に出かけ、バーで歌手をしているミナという女性に、今日だけ母親の振りをしてほしいと頼みます。
夜中過ぎ、不安ながらミナを伴って帰宅したシド。
シドが、アルにミナを「ママだ」と紹介しようとしたときです。アルが先に口を開きました。
「パパ、僕ね、さっき、ママに会ったんだ」忙しくてもう帰ってしまったけれど、また雪の日に会いに来るって。パパの体の事を何より心配していたよ。
抱き合う親子。その夜、夢の中でアルは母親の声を聞いた気がした。
と、いうストーリー。
長々と書きましたが、うーん、普通でした。普通にいい話。最初が一番面白い。
アルの話を聞いている、という構成でしたが冒頭のシーンには戻らず。
若干、消化不良の感はあるものの、教科書に載るのも納得のお話だと思います。
・西條奈加『閻魔の世直し:善人長屋』(13’新潮社)
――表は堅気のお人好し、裏は差配も店子も凄腕の悪党が揃う「善人長屋」。天誅を気取り、裏街道の頭衆を血祭りに上げる「閻魔組」の暗躍は、他人事として見過ごせない。長屋を探る同心の目を潜り、裏稼業の技を尽くした探索は、奴らの正体を暴けるか。――
時代劇です。前作『善人長屋』の続きです。うろおぼえ。
住民は、みんな泥棒や美人局や情報屋や詐欺などの裏稼業を持っている千七長屋。そこへ根っからの善人でおひとよしの加助がやって来て……という話でしたたしか。
ストーリーは上記の通り。「閻魔組」という凄腕の侍三人衆が、次々と元締めや親分を殺してしまうものだから、統率がとれなくなった悪人たちがはびこり逆に治安が悪くなってしまった。
瀕死で行方不明の盗賊の親分に恩のある長屋の住民たちは、加助を除き総出で犯人捜しに出る。
という所に、それぞれの住民の想いや稼業の腕、事件の裏に潜む因縁の相手、恋や人情、恨みや体裁、もろもろを丁寧に描いた作品です。どんでん返しもあり。
『ミラクル』より面白いと感じました。
加助さんの出番が少ないのがなあ。人もばったばった死ぬし、悪人なら殺してもいいのか、という主題がありながら黒幕はさっくり。閻魔組も結局利用されていただけとはいえ、さすがに殺し過ぎでは……。
今回は差配の娘お縫いちゃんを主軸にしているんだけど、会話のテンポが心地よいです。
西條奈加の作品って、主人公が快刀乱麻の活躍をするよりも仲間が活躍することが多い気がする。主人公はあくまで普通に悩む何処にでもいるような人で、だからその分感情移入できるのかも。
万能型主人公よりは断然こっちのが好みです。
・北野勇作『社員たち』(13’河出書房新社 NOVA COLLECTION)
――会社が地中に沈んだ?怪獣クゲラの誕生?妻が卵になった?低所得者用未来改造プログラム?戦時下なのか不景気か?明日のために出社する。奇想と笑いと哀愁に満ちた、超日常の北野ワールド12編。――
ふ、不思議な話だなあ。
不条理なことが説明されずに起こり、みんなその場で対処するけど根本をどうにかしようとはしないような、そんな話たちです。
連作だと思うんだけど、全部が全部繋がっているわけではなくて、まあ掲載された時期も雑誌も違うのでそこは。
主人公は社員たち。敵って誰だよ。
『社員たち』=敵の攻撃で会社が埋まってしまい、それを掘り返す。社長が出てこなければ失業保険もおりないし、書類にハンコも押せないぞ! 掘りだせ社長。
『大卒ポンプ』=敵の液状化弾により浸水した旧社屋。水を排出するのはポンプと人間が融合した人間ポンプ。ところがポンプになったモリノミヤ君が逃げ出した!?
『妻の誕生』=生まれ変わりたい。そんな妻は卵になった。妻が生まれるまでの間、卵を温めたりシフォンケーキを焼いたりの日々。ちょっとほのぼの。
『肉食』=肉だよ、肉。肉を食わなきゃ。新しい仕事はチラシを配ること。肉体。肉欲。肉奴隷。肉玩具。肉布団。肉林。肉塊。肉汁。
とにかくさあ、自殺だけは二度とダメよ。わかった?
『味噌樽の中のカブト虫』=会社の健康診断で、脳の中にカブト虫がいることがわかりました。手術? 保険効かないよ。メスを持ってきてセットにして業者に売りなさい。え? カブト虫が出た後の脳? それはまあ、そういうことになりますかね。宇宙人のせいです。
『家族の肖像』=息子の薬代の為に、低所得者用未来改造プログラムを受けたおれ。家族の為だ。自堕落な奴らとは違う。家族の為だ。でも、その家族って……?
『みんなの会社』=落語です。こういうことありそうですね。
『お誕生会』=クラゲ怪獣クゲラ。ろうそくを吹き消しただけ。泣いただけ。みんなで踊り狂う。
『社員食堂の恐怖』=こんなのざるうどんじゃなあああい!
どんな状況になっても社員は社員。なんか、いたたまれないというか、お疲れ様です。
『社内肝試し大会に関するメモ』=最後が怖い。『社員食堂の恐怖』の続きと見れば見えなくもない話。
『南の島のハッピーエンド』=クゲラはハッピーなのかなあ。
『社員の星』=掘り出した社長は本当に自分たちの社長なのか? もし違ったら? 理想の社長を求めて、輝けシャイン。
・皆川博子『影を買う店』(13’河出書房新社)
――〈作家M・Mが常連の喫茶店に通う私が気付いた、この店の密やかな性戯とは?(「影を買う店」)〉他、いっさいの制約から解き放たれた皆川博子の真骨頂が堪能できる至極の21編。
これぞ幻想小説の極み!
「本書に収録されている作品は幻想、奇想----つまり私がもっとも偏愛する傾向のもの----がほとんどです。
消えても仕方ないと思っていた、小さい野花のような、でも作者は気に入っている作品たち。
幻想を愛する読者の手にとどきますように」----皆川博子
【収録作品】
影を買う店
使者
猫座流星群
陽はまた昇る
迷路
釘屋敷/水屋敷
沈鐘
柘榴
真珠
断章
こま
創世記(写真=谷淳志)
蜜猫
月蝕領彷徨
穴
夕陽が沈む
墓標
更紗眼鏡
魔王 遠い日の童話劇風に
青髭
連祷 清水邦夫&アントワーヌ・ヴィオロディーヌへのトリビュート――
和洋古今入り乱れた皆川博子ワールド。この人の作品では何気に『笑い姫』が一番好きです。
『影を買う店』の作家M.Mって森茉莉かな。
この作品の中だと『釘屋敷/水屋敷』が一番雰囲気が良かったです。日本にしかない怖さが出ているうえに、どこかロマンの香り。長編で読みたくなった。
しかし、なんでも書ける人だなあ。『柘榴』の日本の戦時中の話とか、『使者』の中世な感じとか。
『月蝕領彷徨』『穴』『創世記(写真=谷淳志)』の視覚的な作品も収録されているし、ファンなら嬉しい一冊。ファンなので嬉しい。
・恩田陸『雪月花黙示録』(13’KADOKAWA)
――私は高校生の蘇芳。いとこの紫風(美形なうえに天才剣士!)が当選確実の生徒会長選挙を控えたある日、選挙への妨害行為が相次いだ。また派手好きで金持ちの道博の仕業かと思ったら、「伝道者」を名乗る者が出現。私たちの住む悠久のミヤコを何者かが狙っている!謎×学園×ハイパーアクション。ゴシック・ジャパンで展開する『夢違』『夜のピクニック』以上の玉手箱!!――
――大和文化を信奉する「ミヤコ民」と物質文明に傾倒する「帝国主義者」に二分された近未来の日本。美青年剣士の紫風が生徒会長を務めるミヤコに謎の飛行物体が飛来した。それは第三の勢力「伝道者」の宣戦布告だった!――
恩田陸のバトルもの……。前回の『夜の底は柔らかな幻』以来不信の根は深い。
またもやもやするのはなあ。
ところが! これはちゃんと面白い。章仕立てになっていて、話がクライマックスに向かって一本通っている。それだけでもう満足です。
恩田陸は文章上手いし展開早いし、キャラクターのツボ押さえているし、本来は文句の付けようもないんですが、時々オチをぶん投げてしまわれることがあるから。
これは大オチもちゃんと付いています。安心してお勧めできます。
ストーリーは上記、大和文化を信奉する「ミヤコ民」と物質文明に傾倒する「帝国主義者」に二分された近未来の日本を舞台にした、ミヤコ主軸の学園バトル。
これだけでもはっちゃけていますが、設定もだいぶオモシロイことになっています。
主人公は日本刀で戦う女子高生、蘇芳(すおう)。姉は文武両道才色兼備、大和撫子の萌黄。いとこは生徒会長で美形剣士。蘇芳に付きまとう婚約者で派手好きな美形、道博などなど……振り切ってます色々。道博が縦ロールだとわかった時点で吹き出しました。ミッチー憎めなさすぎ。
でもこういう作品にありがちな、キャラクターが勝手にわいわいして終わりではなく、きちんと主題があって、それに則って登場人物が動いているのがよかった。
書きたいことはわかったけど、ここまで濃くする必要があったのかはわからないかな(笑)
すっかりオチ要因になってるなあ、恩田陸。
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それでは、また。二週間後くらいに。
さようなら。
『これなら満点よね』