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読書日記

神郡が読んだ本の感想や、諸雑記を書いていくブログ。
知り合いには見せられないなあ。

お店のバックヤードにお客様から頂いたクレーム事案が貼られているんです。
それは別にいいのですが、迷惑なお客様に対してはこちらからもクレーム事案を貼り出していきたい所存。





・エドガー・アラン・ポー『ポー名作集』中央公論新社
・谷崎潤一郎『春琴抄』新潮社; 改版 (1951/2/2)
・吉田篤弘『イッタイゼンタイ』徳間書店 (2013/4/20)
・歌野晶午『春から夏、やがて冬』文藝春秋 (2011/10)




・エドガー・アラン・ポー『ポー名作集』

――理性と夢幻、不安と狂気が綾なすポーの世界を、流麗な丸谷才一訳で再現。代表的傑作「モルグ街の殺人」「黄金虫」「黒猫」「アシャー館の崩壊」など八篇を収録。――


丸谷才一訳の文庫だったけれど中公だったか? かなり古いもので、表紙が『黒猫』の挿絵のもので読みました。
ポーはだいぶ以前に『モルグ街の殺人』を読んだきりで、あとは『アナベル・リィ』と『大鴉』くらいしか読んだことはなかったかもしれません。それも日夏耿之介の訳に惚れてしまったのでポー自体の印象は薄かったという。

読み直してみると結構憶えていた内容と違いましたね。密室殺人の犯人がなんと驚きの〇〇〇だった、くらいの印象しかなかったのですが、かなりきちんと筋道を立てて推理していました。オーギュスト・デュパンの安楽椅子探偵っぷりは素敵です。まあやっぱりかなり変人なのですが。あと警視総監弱い。
『マリー・ロジェの謎』での論理的な推理展開はしびれました。香水店の美人の売り子が殺害された事件。各新聞社の出した記事を読みながら、もっともらしく書かれた記事の裏側を読み取り真実に辿りつく姿は堂に入っています。

最初の三作がオーギュスト・デュパンものだったのでずっとそうなのかと思いきや、『お前が犯人だ』は後半で違う事に気付きました。ちょっと不謹慎な気もしますし、甥っ子何か反論しなかったのかと思いつつ『スフィンクス』。白昼夢のような怪談。『黒猫』は最後まで読むと語り手の冷静さがどこか怖い。『黄金虫』は推理小説なのか、冒険小説的でもあり。浪漫です。『アッシャー館の崩壊』も悪夢的な話。病んでます。
繰り返される生きながら埋められるイメージ。



・谷崎潤一郎『春琴抄』

――盲目の三味線師匠春琴に仕える佐助の愛と献身を描いて谷崎文学の頂点をなす作品。幼い頃から春琴に付添い、彼女にとってなくてはならぬ人間になっていた奉公人の佐助は、後年春琴がその美貌を何者かによって傷つけられるや、彼女の面影を脳裡に永遠に保有するため自ら盲目の世界に入る。単なる被虐趣味をつきぬけて、思考と官能が融合した美の陶酔の世界をくりひろげる。――


やっぱり変態っぽい。谷崎変態っぽい。谷崎っぽい。でも好きだ。
ちょっと少女漫画チックな筋道ではありました。
主人と召使。絶対服従の少年。美しい盲目の少女。厳格さと密かな甘やかさ。要素ばっちりです。

後年、佐助が記した春琴の手記を語り手が読むという構成。最初は圧倒的に強かった春琴が、その顔を傷つけられ(春琴の態度が原因だけど)佐助も自分で目を潰してからの精神的な優位が逆転する辺りはちょっと切なくなりました。佐助これはもてない。

地の文に句読点が極端に少ないので読みづらいですが、短いので頑張れば大丈夫です。



・吉田篤弘『イッタイゼンタイ』

――「なおす」という言葉がふたつの意味を持った。かつて「殺し屋」と呼ばれていた者は「なおし屋」となり、かつて「修理屋」と呼ばれていた者も「なおし屋」と呼ばれている。男はこわれたものをなおし、女は男をなおしてゆく。都会の片隅のシュールでコミカルな日常と秘密を描く現代の寓話。――


これもまた繋がっていないようで繋がっている連作集。
時計のなおし屋、配管のなおし屋、シンバルモンキーのなおし屋、服のなおし屋テレビのなおし屋靴のなおし屋……それらは皆男たち。男たちはある日から何かをなおす衝動に駆られ始めている。

男たちには女たち。工場で働く女たちは何かを作る。でも、男たちがなおしてしまうから物が売れなくなる。物が売れなくなるとどうなる? ……女たちは男たちを「なおす」ことに決める。工場で働く女たちの間でだけ流行する昔の映画。

決めたけれど、そう簡単に「なおす」ことなんて出来ない。なおせないならどうする?
そして気付くと男たちは皆死んでいく。それは愛ゆえに。


みたいな話でした。なんか途中で路線変更したのかな? というちょっとよくわからない話もあり。全体的にはおしゃれで素敵。
ラストはちょっと考えてしまいました。愛って無条件に良いものみたいに思われているけれど、それが逆に破滅を招くこともあるんだなこわい。いい話な流れでバッドエンドな本でした。



・歌野晶午『春から夏、やがて冬』

――スーパーの保安責任者の男と、万引き犯の女。偶然の出会いは神の思い召しか、悪魔の罠か?これは“絶望”と“救済”のミステリーだ。――


結構よく名前を見かける作家さんです。『葉桜の季節に君を想うということ』が有名なのかな? それはなかったのでこちら。

文体は特に読みづらくもなく変な特徴もなく。二時間くらいで読めます。ミステリーではない、ある……うーん。エンタメよりの、ミステリー。ミステリーよりのエンタメ。

なにがミステリーかといえば主人公の娘の轢き逃げ事故の真相です。でもそれは7年前であり、時効も過ぎている。
話の軸は、妻も娘も失った男が万引き犯の若い女性を捕まえ、その女性が娘と同い年であるため見逃し、女性がDVを受けていることを知り……という展開の中に過去の事故が絡む感じです。

どんでん返し系の得意な作者さんらしく、後半急展開。そこからの真相かと思いきやまさかの流れ。小説のご都合主義を上手くついた話でした。

途中、主人公が女性との関係を疑われるシーンはちょっと周囲の誤解激しくないかと思いました。主人公もはっきり「誰か二人の話の具体的内容を聞いて言っているのか」と正論を言ったのにもかかわらず最後まで疑われているし、元エリートで同系列のチェーンなのに扱いぞんざいだし。

でも確かに絶望と救済の話で間違いないです。もやもやしますが。これで良かったのかどうかは読者に投げる感じで。





それではまた。
さようなら。


『心の痛みを知らぬ者め!』