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読書日記

神郡が読んだ本の感想や、諸雑記を書いていくブログ。
知り合いには見せられないなあ。

自ら動き回ることが出来て、光合成で栄養を摂ることが出来る。
ミドリムシはいわば動く植物、光合成出来る動物。
初めて知った小学生の時、凄い衝撃を受けたものです。
なんだこれは、まるっきりファンタジーじゃないかと。

まさか時代は下り、サプリメントになるとは思いもしなかっただろうなぁ、あの頃の自分とミドリムシ。





・米澤穂信『折れた竜骨』東京創元社 (2010/11/27)
・西條奈加『九十九藤(つづらふじ)』集英社 (2016/2/26)
・中田永一『私は存在が空気』祥伝社 (2015/12/11)
・恩田陸『ブラック・ベルベット』双葉社 (2015/5/20)
・小林泰三『失われた過去と未来の犯罪』 KADOKAWA/角川書店 (2016/6/2)・『クララ殺し』東京創元社 (2016/6/30)
・コンスタン『アドルフ』岩波書店; 改版 (1965/01)



・米澤穂信『折れた竜骨』

――ロンドンから出帆し、波高き北海を三日も進んだあたりに浮かぶソロン諸島。その領主を父に持つアミーナはある日、放浪の旅を続ける騎士ファルク・フィッツジョンと、その従士の少年ニコラに出会う。ファルクはアミーナの父に、御身は恐るべき魔術の使い手である暗殺騎士に命を狙われている、と告げた……。
自然の要塞であったはずの島で暗殺騎士の魔術に斃れた父、「走狗(ミニオン)」候補の八人の容疑者、いずれ劣らぬ怪しげな傭兵たち、沈められた封印の鐘、鍵のかかった塔上の牢から忽然と消えた不死の青年――そして、甦った「呪われたデーン人」の襲来はいつ? 魔術や呪いが跋扈する世界の中で、「推理」の力は果たして真相に辿り着くことができるのか?
現在最も注目を集める俊英が新境地に挑んだ、魔術と剣と謎解きの巨編登場!――



これ面白かった。
ミステリ好きでファンタジー嫌いの知人も、これは絶賛でした。

舞台は十二世紀末のヨーロッパ。魔法が存在する世界。そこで起きる殺人事件。
ミステリーと、ファンタジーと、少女の成長物語であり、バトルシーンなんかもあり、恋はないけどいい感じな物語でした。
最初は米澤穂信がファンタジーかあ、と敬遠していたのですが、なかなかどうして読まないともったいないです。でも暗さはなし。

魔法はあるけど万能じゃなくて制約があり、アリバイや実況見分なんかは推理要素。不死身の存在や島を脅かす侵略者との戦いはファンタジー。そこがうまくかみ合っているのがさすがです。

犯人は、まあそうだろうな、というところ。登場人物のキャラクターは結構しっかりしていました。でも掘り下げるには足りないかな。人数も多かったですし。詰め込み「過ぎ」ではないけど、これで終わらせるのはもったいなかった気がします。

読むとわくわくできます。



・西條奈加『九十九藤(つづらふじ)』

――天涯孤独の身の上で、波乱の人生を歩んできたお藤。縁あって任された口入屋を立て直すために商いを一新。常識はずれの勝負は、やがて江戸を揺るがす事態に…。人が持つ力を信じ、自らの道を信じ、人生を切り拓く姿が胸を打つ感動の長編時代小説。――


時代劇です。
仕事を斡旋する口入屋の女主人・お藤が、傾いた経営を立て直すために当時としては画期的で常識破りな策を講じたために起こる騒動を描いた繁盛記です。細腕繁盛記です。

お藤は芯は強いがやっぱり女性なので、周囲の人の協力を得ながら事に当たります。一人でがんがん突っ走るタイプの主人公ではないです。いや、突っ走ってはいるのですが報連相がしっかりしている感じ。

西條奈加の小説は、周りにいる人たちとの絆を大事にしている、というか、一人では解決できない物事をみんなで解決に当たるという話が多いので読んでほっこりするのでしょうかね。

ラブもあります。でもそこか! と思いました。
ええ話でした。




・中田永一『私は存在が空気』

――存在感を消してしまった少女。瞬間移動の力を手に入れた引きこもり少年。危険な発火能力を持つ、木造アパートの住人…どこかおかしくて、ちょっぴり切ない、超能力者×恋物語。恋愛小説の名手が描く、すこし不思議な短編集。――


何かの比喩だと思ったら普通に超能力だった表題作『私は存在が空気』。
途中のサスペンスは乙一っぽいなあと思いました。着地点はそこなんだ!? と驚き。
というか先輩全然そういう感じには見えてこなかったですけどねえ。

この中だと『少年ジャンパー』が好きでした。外国人には「ファニー」と言われてしまう顔の持ち主の主人公。そのせいで引きこもりになり、ゲームやライトノベルの世界に住んでいます。
でもある時、瞬間移動できる能力を手に入れた彼は駅で電車に轢かれそうになった同じ学校の先輩を助けます。
そこから始まる少年の希望と苦悩。いやあ、これいいです。ネガティブな少年書くの上手すぎ。

『ファイアスターター湯川さん』はラストが綺麗でした。話は結構ハードボイルド。
吃音の青年かっこいいです。ラブはなし。

あと『サイキック人生』の主人公がバカっぽくてかわいかったです。これはちょっとらぶ。
掟は厳しいですね。そこが怖いと言えば怖い。


やっぱり乙一は上手い。満足でした。



・恩田陸『ブラック・ベルベット』

――東西文化の交差点・T共和国。この国で見つかった、全身に黒い苔の生えた死体。入国後に消息を絶った、気鋭の女性科学者。ふたつを結びつけるのは、想像の域を遙かに超えたある事実だった――


『MAZE』『クレオパトラの夢』に続く「ウイルスハンター・神原恵弥」シリーズ第三弾。でも前作読んだの十年以上前? もう覚えてないですさすがに。
男性だけど名前が「めぐみ」で口調も女性のものの主人公だったのは微妙に覚えていましたが、ウイルスハンターだったかな? 香取慎吾がかわいいとか言っていたのだけは覚えている。

というかあらすじ詐欺じゃないですか。全然黒い苔の生えた死体出てこない。
最後ちょっと出てくるけど回りくどいというか、でも最後まで読み切らせてしまう実力。上手なんですよねえ。本当。

シリーズものとしてではなく、この作品単体での感想としては徒労感を覚えます。
目の前で起こった殺人事件。謎の人物からの指示。広大な国を経巡り、募っていく違和感。追跡者、知人の事故、巨大な麻薬シンジケートの噂……それらが最後そういうことだったのかぁ、という肩透かし感を個人的には感じました。
なんだったんだここ数日の行動は、という。

恩田陸はこういうエンタメより、角田光代とか川上弘美とかそういう日常系の話の方が向いているんじゃないかとここ数年思います。



・小林泰三『失われた過去と未来の犯罪』

――女子高生の結城梨乃は、自分の記憶が10分ともたないことに気が付いた。いち早く状況を理解した梨乃は急いでSNSに書き込む―「全ての人間が記憶障害に陥っています。あなたが、人類が生き残るために、以下のことを行ってください」。それから幾年。人類は失った長期記憶を補うため、身体に挿し込む「外部記憶装置」に頼り、生活するようになった。『アリス殺し』の鬼才が贈るブラックSFミステリ、ここに開幕。――


はーい発売日に買いました。
SFです。連作短編です。短編との間に幕間では、自分が誰かもここがどこかもわからない誰かの話が挿入され、次第に判明していくという構成です。

一応、一部二部と別れてはいるのですが、実質短編集です。
一部は、何らかの原因により(そういえばはっきりしなかった)人類は記憶を10分しか保てなくなります。それに気づいた人々がなんとか対応策を考え出す、という導入的なストーリー。

二部では、記憶をメモリーチップに保存することが常識となった地球での、まさにチップによって起こる「魂は体に宿るのか記憶に宿るのか」という問題を、複数のケースから考えていくという筋立てです。
他人の体に自分のメモリを挿した場合。複数の人で一つのメモリを共有した場合。死んだ人のメモリを挿した場合……。

ラストは、うーん、はっきりした終わり方ではないので、読後感は微妙。
あとグロはないです。残念。



・『クララ殺し』

――大学院生・井森はある夜、緑豊かな牧草地の世界に迷い込む。夢の中では間抜けな蜥蜴・ビルになってしまう井森は、そこで車椅子の美少女・クララと「おじいさん」と呼ばれる男に遭遇する。翌朝大学に向かった井森は車椅子の少女・露天くららに出会う。彼女は何者かに脅されているため、大学教授のおじ・ドロッセルマイヤー教授に助けを求めてやって来たという。彼女のために脅迫犯捜しに乗り出した井森だが……『アリス殺し』の姉妹編登場!――


はーい発売日に買いました2。
まさかの続編。新藤礼都と徳さん登場。
前回は谷丸警部と西中島君でしたね。
というか四ッ谷礼子は出ないのかな……。続編読みたい。


時系列的には、『アリス殺し』の前。でいいと思います。
「不思議の国」に住んでいる蜥蜴のビルは、地球に井森という大学院生の、分身のような存在がいます。意識を共有できる存在アーヴァタールです。
夢の中で事件に巻き込まれたビル/井森は、地球と夢の両方から事件を解決しようと試みるが――という筋ですおおまかにいうと。

今回は舞台がE.T.A.ホフマンの作品なので、前回のアリスほど知名度はなく世界観に入り込めないです。読んだことないですホフマン。ハイジではないのでご注意を。

それなので細部は置いておいて。
単純にこの作品のみでの感想ですが、好きな小林泰三でした。
コミカルで独特のテンポの会話。比較的不条理のごり押し感は少ないです。
どこかであるだろうと思っていた人物入れ替えトリック。今回はそこか。
夢の中と地球の分身のリンク先の予測も楽しかった。ぽいぽい。

ただ、登場人物が多いうえに聞き慣れないため、ちょっと混同しました。
ラストは前回ほどグロはないものの多少。

諸星の新たに見る夢だけよくわかりませんでした。レッドキングとは違う?

最近良く本出ますね。
ホラー成分が少なめなので、もっと出してもいいんですよ!



・コンスタン『アドルフ』

――これをしも恋愛小説というべきであろうか。発端の1章を別とすれば続く2章だけが恋と誘惑にあてられ、残る7章はすべて男が恋を獲たあとの倦怠と、断とうとして断てぬ恋のくびきの下でのもがきを描いている。いわば恋愛という「人生の花」の花弁の一つ一つを引きむしり、精細に解剖しようというのだ。近代心理小説の先駆をなす作。――


原文なのか翻訳の力なのか、素敵な表現満載。完結で美しいです。

大学を卒業したばかりの青年・アドルフは内気な性格をしています。内気というより、倦んでいて、退屈で、辛辣で、無関心。
何をしても楽しくない日々の中、ある友人が恋にのぼせ上がるのを見ます。そうして自分もふと「愛されたい」と思います。それはでも一生を通じての愛ではなく、遊びとしての愛でした。
たまたま知り合いのP***伯爵に招かれたとき、伯爵の内縁の妻・十歳ほど年上のエレノールと出会います。アドルフはエレノールを「征服に値する女」としてみなし、篭絡にかかります。
遂に愛を得たアドルフは、当初の思惑も忘れて恋に没頭します。しかし彼の家柄は「身持ちの悪い女」など不釣り合いと考えていますし、アドルフも同様に思っています。
エレノールと別れることを考えるアドルフ。しかしエレノールにも父にもいい返事しかしません。
遂にアドルフが街を離れることになり、縁が切れたかにみえた矢先、エレノールは伯爵の元を離れついてきます。自分のせいで後ろ指をさされることになった女を捨てられないアドルフ。二人は決してもう幸福ではないのに、別れることが出来ない。
誰かにはっきり言われたら別れられるのにと思いつつ、寛大な父に恨みに近い念を抱き、父の知人にはっきりと言われて憤り、愛していないエレノールに真相を突き付けることも出来ない。
決心もずるずると引き延ばし、やがてはエレノールが知ることとなってしまい……。


もう、アドルフ馬鹿!
しかしこの、はっと胸を打つような文体は素晴らしい。
良い本に会えました。こういう言い回し好きです。
この無情感……どうしたらいいのか。





動物が光合成出来るようになる/植物が動けるようになる、という話なら分かりますけど、サプリメントで注目されるとはなあ。
ミドリムシ食べたら光合成出来るようになるとかだったら食べますけどね。
でもミドリムシ何億匹食べたって出来ないでしょう。
『もののけ姫』で猩々たちが「ニンゲン、食う、かしこくなる」みたいな感じ。

そういえばユーグレナという藻の一種なのか、ミドリムシという微生物なのかと訊かれたら、食べる際の抵抗感ガラッと変わりますね。



それでは。
さようなら。



『最後(ジ・エンド)にはもってこいの獲物だ』