父の葬儀のその日から、母は目に見えて元気がなくなった。

 時間が経って落ち着いてきたものの、少しずつ記憶が留まらなくなって思い込みと記憶が奇妙に混じり始めた。

 母の言葉は楽しくて面白くて、淋しくて哀しい。

 何度も聞いているうちに、時々私の耳を素通りする。無意識にシャッターが降りてしまうらしい。

 そんな時、母は

「ねぇ、」

と手を叩く。

気の抜けた私の視線を自分に向けようとしている。

「そうだね」

やっぱり気の抜けた返事をしている。