本当はパソコンを買いたかった。

 SurfaceのキーボードのOが入力できなくなって、やむなく画面のキーボードを操作するけれど、慣れていないから打ちづらい。

 

 で、ようやく新しいsurfaceを買おうと見に行って、最後にちょっと悩んだ瞬間に、

 「そうだ、洗濯機も見ておこう」

 なんて思ってしまった。

 

 14年経つ。

 調べたら、洗濯機の寿命は78年とあったけれど、まだ動く。洗える。でも乾燥が今一ついい加減になって、おまけに時間がかかる。

 そりゃそうだ。14年。

 そう思ったところに

「突然に壊れたらいやですよね。

 洗濯の途中だったりしたら、洗濯物出せないし・・」

 なんて売り場のお姉さん、そんなこと言う?って感じどんどん攻めてくる。

 でも、そうかあと不安が走る。

 確かに14年は重い。

 もう少し頑張ってくれそうな気もするけれど、なんせ14年は予測外な気もする。

 

 おまけに今なら2万円の現金値引きとか!

 弱いんだよね、こういうの。

 今買えばお得です、なんていうの。

 今買わなきゃ損っていうの。

 だって、必要性はあるわけで、必ず、多分近いうちに買わなきゃいけなくなるものだから。

 で、買ってしまうわけです。

 

 ああ、surfaceはまた遠のきました。

 取敢えず、タッチペンなるものを買って、ちょっとだけ不便を解消。

 

 新しい洗濯機が届いた日。

 若いお兄さんが二人で運んできた。狭い洗面所からまず古い洗濯機を出さなきゃいけない。


 二人で出すのかと思ったら、小柄な方の人が一人で出す気らしい。毛布を下に敷いて、まずそこに置いてから引っ張ると言う。でも、洗濯機の置き場というのは水が溢れないように高さ5センチほどの箱になっている。その5センチを乗り越えるのが苦労だ。それを彼は一人で持ち上げた。

 離れてその様子を眺めていた私は思わず「おおお」と声が出てしまった。

「力持ちですね」

「力だけじゃないんです。頭使うんです。どこを持ったらいいかちゃんと考えているんです」

「なるほど」

 そうだろうなと思う。

 力持ちだけで満足しないところが可愛い。まだ20代らしき青年。


 新しい洗濯機をまたその5センチの枠の中に入れるのが二人でやってもなかなか大変で、ついつい手伝いたくなって、下に挟まれた毛布を引いてあげようとしたら、びくともしなくて、すごすご退散。

 かえって邪魔して、すみませんって感じ。


 洗濯機の配置が終わると、

 マスクをして微妙な距離を保ちながら、恐々と配達のお兄さんから説明を受ける。

 聞いたことのないフレーズに、「?」となる。


「この乾燥フィルターも掃除を忘れないように」

 乾燥フィルター?

 今まで一度もしたことない。

 いや、存在そのものを知らない。


「その乾燥フィルターって、前の洗濯機にも付いていましたか」

「勿論、ドラム式洗濯機にはみんなついていますよ」

「えええ、一度もしたことありませんでした。この14年、一度も、です。それが、乾燥が中途半端になった原因ですね」 

 なんか納得しそうになる。

「いや、むしろ何もしていなくても14年持った方がすごいと思います」

「ああ、そうですね。確かに。なるほど」


 自分の迂闊さにあきれた。

 取説をあまり読まない。

 洗濯機とは長い付き合いだし、ドラム式だろうが、そんなに違わないだろうと思っていた。

 

 今更、落胆してもしょうがないけれど、

乾燥フィルターとやらをきちんと定期的に掃除していたら、もっと20年くらいは頑張ってくれたかもしれないと思うと、

それはそれで惜しい気がしないでもない。


 配達のお兄さん達が帰った後、前の洗濯機の取説を探した。

 読みもしないのに、家電の取説はすべてしまい込んでいる。

 故障したりすると、あわてて確認する。不具合がなければ出番はない。

 

 その取説を結構丁寧に、今更真剣に読んでみたけれど、乾燥フィルターなるものはなかった。

 いくら私が粗忽でも、もしあれば、それくらいは気づいただろうと思う。

 なくてよかったと今更なんとなく安心する。

 

 でも、最近の洗濯機にはすべてあるのだろう。

最近というのは一体いつくらい前から言うのか分からないけれど、少なくとも、一生懸命に持ち上げて、丁寧に説明してくれた青年が仕事を始めた頃からこっちの洗濯機にはあるのだろう。


 私のそれはなんせ14年前のそれで、彼はまだ仕事を始めてもいない頃で、

そんな古い洗濯機を見たことがなかったかもしれない。

 仕方ないけれど、言い切らなくてもよさそうなものなのになぁ。

 

 やっぱり、替え時だったか。