公園には今から使う鉄棒の他に、定番のブランコから案外マイナーな雲梯(うんてい)まで様々な遊具が配置されていた。


健太の家から一番近かったこの公園は、大地の知る『一般的』な公園よりもいくらか大きめだった。

だから配置されている遊具もそれなりに多いのだろう。

大地が名前を知らない、メロン型のクルクル回る遊具や半円形のよく分からない銀色の遊具もあった。



そもそも公園に入るなど、何年ぶりかも分からない大地はちょっとだけすべり台で遊びたい変な衝動に駆られた。


ふと、啓輔が遊具で遊びたいとか言い出すのではないかと思って鼻で笑った。

しかし他の遊具を見向きもせずに鉄棒に向かって健太と走る啓輔を見たとき、大地は相当なショックを受けた。

俺は… 啓輔以下か…



「よし健太! 一回やってみろ!」
啓輔の言葉に健太は鉄棒の前に立ち、ひたと握りしめた。

観月が「がんばれ健太くん 負けるな健太くん」と理解し難い応援する中、健太はより一層鉄棒を強く握り、一気に地面を蹴った。


しかし空中でバタバタとふっただけで、足は無惨にも墜落してしまった。


「あちゃちゃ~」
観月は相当悔しそうに健太の顔を窺った。

健太は完全に腕を伸ばしきり、両足を中途半端に曲げて地面にズザザと引きずっている。

まさに『逆上がり失敗しました』を表すポージングである。


「なるほどなぁ~」
啓輔が何かを考えながら呟いた。

本当に分かってんのか?



「まずはおれが見本みしてやる」
と言うや、啓輔はちょっと勢いをつけて地面を蹴り上げた。

モーションに違和感なく、くるりと一回転して地面に降り立つ啓輔。

足を揃えて両手を広げ、ビシッとあたかも体操選手のようにポーズを決めた。


「すご~」
観月と健太は思わず拍手をする。

「いやぁ… それほどでもねぇよ~ぉ」
照れ隠しに頭を掻く啓輔は満更でもない顔をした。


「ミカちん! もっかいやって?」

「うん。僕も見たい!」
「仕方ねぇなぁ もっかいだけだぜ?」
観月と健太におだてられた啓輔は「もっかいだけな?」を連呼し、何度もくるくると鉄棒を回っている。


手本ばっかやってないで早く健太に逆上がり教えてやれよ。