そんな彼らと一緒にいるのがひどく恥ずかしいと思った大地は、青々と茂った木の作る日陰へと避難した。

木陰に入るだけで体感温度がこんなにもグッと下がるとは、改めて大木の有り難さを悟った大地であった。

太陽の凄さには気がつかなかった大地であった。


しばらくはぱっとしない健太の逆上がりを眺めていた大地は、その逆上がりに何の興味も持たなかった。

そもそも、啓輔が来なかったら自分がこの炎天下で出来もしないだろう逆上がりを教えることになっていたのだ。

そう思うと大地は自分の寛大さに気がついた。

それとともに啓輔に少しばかり感謝の気持ちがこみ上げてくるのを感じた。


しかし見ている限り、あんな教え方ではおそらく逆上がりを習得するのに10年経っても無理だろう。

その頃には別な要因で出来るようになっているに違いない。

一緒に教えている観月がひどく困惑している。



大地はそんな彼らを突っ立ったまま眺めていたが、近くに小綺麗なベンチを見つけた。

一度強い日差しの下へと出て、それをザザーっと引っ張ってきてどかっと座った。



ケータイをいじりながら大地はそのベンチに寝転び、木漏れ日のきらきら光る木をしばらく見つめていた。


あの日を思い出す…
しかし即座に忘れようとする自分がいる。

もう、2年も前に決めたこと。

今更どうしようなどとは思わない。


あの日、大地はそう決めたのだから。




鉄棒でしばらく逆上がりの練習をしていた健太とその家庭教師の啓輔は、少し休憩することになった。

というのも、啓輔のアシスタントをしていた観月があまりの暑さに
「なんか飲み物買ってくる… 健太くんは何飲みたい?」
と暑そうにコンビニに向かったからである。

その足取りは早くこの場から、つまり強力な日光から逃げたいという気持ちが明らかに込められ、重々しくも早歩きだった。


「あっちーなぁ…」

しゃがみ込んだ啓輔はスウェットをまくって汗を拭った。

「けーすけにぃは運動何やってるの?」

C.C.レ〇ンを頼んだ健太もしゃがみながら、唐突に尋ねた。