楽に消えることができる方法があるなら、それはとても幸せなことだと思う。
今思い返すと、一度だけ本当に死ねたのでは?と思った瞬間があった。
NZにいた頃、保健室におかれていた注射針を大量に盗んだことがある。
生まれて初めての盗み。
大量の注射針を手の甲の血管に刺し、瀉血をした。
私の場合、血管が細い為、腕からは血管を見つけ出すことは看護婦や医者も諦めるほどで、大体手首からいつも採血をするほどなので、素人の私なんかが静脈だの動脈だのを見つけることは至難でしたので、手の甲に刺していた。
同時にリストカットもしていて、かなり深く切っていて、3,4日血が止まらなかった。
力を入れると噴水みたいに飛び出すときもあって、見ていて楽しかった。
体が動かせなくなってきて、授業はまちまち。
タバコを一口でも吸えば猛烈な吐き気とめまい、地球がぐらぐら。
息が出来なくなってきて、本当に大変。
死ぬ前ってお迎えが来るって言うじゃない。
アレが来た。
父が死ぬときも、黒いなにかが死ぬ3日前あたりから明け方大体決まった時間に乗ってきていた。
父が死ぬことは誰も知らなかった。
病気じゃなかったし、自殺だったから。
父さえも知らなかったから、死に憑かれた妄想ってものでもない。
父が死ぬと決めたのは、恐らく死ぬ数時間前のこと。
だから死に憑かれた妄想ではないとここでは言い切る。
話しを戻して、私は鬱真っ只中で腕を切ること、眠剤を飲むことに没頭して、吹き出す血を楽しんで、朝眼が覚めると絶望をし、吐き気とめまいと日に日に大きくなる自分の心臓の鼓動と、息の苦しさと、手足の冷たさに悩まされた。
ある日、夕方ふらふらとベッドで寝ていたときに、地震を感じた。
おかしいな、NZ地震ほとんど無いのに。
ぐらぐらと小刻みに揺れて、次の瞬間に全く体が動かなかった。
しばらく自分の体が動かないことに気づかず、気がついたときには体が30センチほど自分の本体から離れた場所に浮いていた。
びっくりした。
これが幽体離脱というやつかー!
なんて頭では思わず、あれ?浮いてる?と思った瞬間に本体へ落ちた。
もどるとほとんど息ができず、びっくりするほど苦しかった。
体動かないし。
そのとき、なんだかわけのわからない声を聞いた。
何語だかわからないけど、頭の中で理解できた。
「君を好きで好きでたまらない。本当に好きなんだ」
誰だかわからないけど、男性だって何故か確信していた。
何語だかわからないけど頭の中で意味が理解できたように、同じく頭の中で男性だってわかった。
誰だかはわからなかったけど、怖いって感覚もなくて、とりあえず正体を見たくて、目を頑張って動かして足のほうを見ると、ジーンズがみえて、ジーンズ以外は見えなかった。
ベッドに足を組んで腰掛けてた。
それ以外に何も確認できなくて、そのまま寝てしまった。
眼が覚めると夜だったので、また寝た。
それ以降金縛りにもあったこともないし、幽霊?も最初で最後、見たことはない。
NZにいる間、これを含めて2回金縛りにあった。
1回目はなんにもなくて、本当にただの疲れからくるヤツで、辺りを見回したけど何もないから、どこまで起き上がれるかを実験してみたりしたけど、90度まで起きあがってみたとこで限界を感じて寝た。
共通点は金縛りにあう前に地震のような体の揺れを感じたこと。
2回目はきっと本当に死の手前だったのではとたまに思い出しては思う。
好きで好きでたまらないってなんなんだろ。
この声の正体が離脱した私の幽体を引き戻したのは間違いないんだけどさ。
あのときこの声の正体がいなかったら、私は日本から13時間離れた小さなカントリーサイドの街で一生を終えていたんだなと思う。
幽霊って見たことがないし、よくわからないけど、たまに思い出すたびにあのとき楽になれていたらなと思うことがある。
そういう話し。