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第1話

1】 Tomorrow  憶のカケラ  月25日

 

 

 

闇夜は衝動を秘めた静かなる空間

 

不気味に輝く光りを頼りに いま、ぼくは ――


 

 

 

意識を持ったまま夢の世界にいるのは

おそらく初めての経験だと思う。

 

もちろん、ぼくがあさ目覚めたときに

“その事実である記憶”を

失っているだけなのかもしれない、けど。




人間の記憶というのは

“その一瞬”を適当なメモに書き残しているようなもので

メモの大きさや素材も、統一されてはいないし

書き残される文字が達筆だったり

はたまた記号のような象形文字だったり、と種類も様々。

保存状態や突発的な事故、月日の風化などにより

メモは破損したり、跡形もなく消滅したりもする、らしい。


 

この仮説も、むかし誰かに聞いたことのある話、というだけで

一言一句、この“記憶のメモ”を読み取ることは、なかなか難しく

また別の異なる記憶を導き出すことも

極めて困難だと感じるぐらいに、このメモは劣化していた。


 

 

すべてが不自然だった。


 

 

このメモくずが、ぼくの確かな記憶として突如甦った理由は、

ぼくが、この夢の世界に

今まで感じたことのない奇妙な違和感を体験しているからである。


 

 

いま、ぼくは夢の世界にいる。

なにもない、暗闇の世界に、不気味にボワリと浮ぶ細長い道を

いま、ぼくは確かに歩いている。

素足の裏では、砂っぽいザラザラとした感覚。

 

夢など、そういうものなのかもしれないけれど

ぼくが創り出しているはずのこの世界は

ぼくの思考を全く無視している。

意識があるのに

自らの意思がうまく機能されていないのは、実に気持ちが悪い。


 

そして

なによりも、不自然に感じた要因は

ぼくに思い出せる記憶がないことだ。


 

どのくらいの距離

どのくらいの時間

ぼくは歩いているのか

 

出発地はあったのか

目的地はあるのか

何故、歩いているのか

 

ぼくには思い出せるはずの記憶がない。

「記憶がない」というよりも、

時間の経過と共に、新しい記憶が書き残されると同時に

過去の記憶が「消されている」という表現の方が

正しいのかもしれない。

 

むかしむかしの古い記憶から、わずか数分前の記憶まで

スルスルと消えていくような感覚に、ぼくはいま陥っている。

 

 

むかし誰かに聞いた、記憶のメモのはなし。

もし本当にそうやって記憶が残されているとすれば

きっとぼくのメモをビリビリと破く奴がいるのだろう。

火をつけて轟々と燃やす奴がいるのだろう。

水を降らしてドロドロとメモを溶かし、押し流す奴がいるのだろう。


 

奇妙な違和感は、

いまもぼくを、くるしめている。

 

 

つづく


 

 


attention


ぼくには、【消えた記憶】がある。


思い出せない、【大切な人】


―― アイツとの、「約束」







※ 第1章 Tomorrow は


   プロローグですが、若干長編になっております



※ 日付表記にご注意下さい


  第1章 Tomorrow  7 月 25 日


  第2章 Yesterday  7 月 24 日



※ 改行が独特です


   ご了承下さい

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