栖-Sumika -222ページ目

コノ詩好き

生命は    吉野 弘


生命は
自分自身で完結できないように
つくられているらしい
花もめしべとおしべが
揃っているだけでは不充分で
虫や風が訪れて
めしべとおしべを仲立ちする

生命はすべて
そのなかに欠如を抱き
それを他者から満たしてもらうのだ

世界は多分
他者の総和
しかし
互いに欠如を満たすなどとは
知りもせず
知らされもせず
ばらまかれている者同士
無関心でいられる間柄
ときにうとましく思えることさも
許されている間柄
そのように世界がゆるやかに
構成されているのはなぜ?

花が咲いている
すぐ近くまで
虻の姿をした他者が
光りをまとって飛んできている

私も あるとき
誰かのための虻だったろう

あなたも あるとき
私のための風だったかもしれない