昨年9月、墨田区議会に「学校給食の放射性物質の計測に関する陳情」を提出しました。
不採択になりましたが、議会のやりとりをまとめた議事録ができるまで投稿してきませんでしたが、議事録ができましたので、公開します。
まずは陳情内容から
「学校給食の放射性物質の計測に関する陳情」
陳情趣旨
1 給食の放射性物質測定の回数を増やし、限りなく0ベクレルに近い給食の実現を。
2 放射性核種をセシウムだけではなく、ストロンチムまで計測できるよう体制を強化してください。
3 現在おこなっている陰膳方式の測定だけではなく、調理前の食材の測定も実施してください。
【陳情理由】
(1) 墨田区は福島第一原発の事故による内部被曝を心配する区民の要望をうけ、全国でも早く学校給食の放射性物質の測定をはじめました。しかし、開始当初各施設毎月1回の測定であったものが、いま「各施設で合計4回の測定を実施」する現状です。これでは十分に子どもたちを内部被ばくから守れません。市場に流通されている食材は国の基準を合格したものであったにせよ、キノコ類や魚、肉など放射性物質を蓄積しやすい食材は丁寧に測定することが必要です。
ベラルーシの元ゴメリ医科大学学長のバンダジェフスキー氏は、最小でも体内セシウムが*5ベクレル/体重kgを超えると心電図に影響がでると試算しています。そのためには1日の食事の合計で5ベクレルを超えてはいけません。限りなく0ベクレルの食品を摂ることが必要です。測定回数を増やし、限りなく0ベクレルに近い給食を実現してください。
(※例えば体重30キロの子どもであれば体内全体で150ベクレルを超えると心電図に影響が現れる)
(2) 区が使用している測定機では放射性核種のストロンチウムを検出することはできません。ストロンチウムは骨や筋肉に蓄積する特徴をもっており、育ち盛りの子どもたちにとって最も危険な放射性物質です。現在の体制を強化し、ストロンチウムを検出できるゲルマニウム半導体検出器の購入と、測定に必要な人員増強を願います。(品川区では一校あたり年間1回のストロンチウム検査を実施しています)
(3) 一般的に行なわれている測定方法は、調理済みの給食を測定する「陰膳方式」ですが、細かく放射性物質を測定するには調理前に食材の測定をする必要があります。特に放射性物質の蓄積しやすいキノコ類など特定して測定を実施するよう願います。
以上
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次に議事録です。区のホームページから検索すれば閲覧できるのですが、調べるのが大変なので、全文掲載します。会としては内容を精査、検討し、今後の運動へつなげていきたいと思います。
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学校給食の放射性物質の測定に関する陳情について
○委員長(瀧澤良仁君)
学校給食の放射性物質の測定に関する陳情を議題に供します。
参考までに理事者から説明を聴取いたします。
◎教育委員会事務局次長(石井秀和君)
学校給食の放射性物質の測定に関する陳情につきまして、ご説明申し上げます。
陳情の要旨は、お手元の資料の3点でございます。
まず、学校給食の放射性物質の測定回数についてご説明申し上げます。平成26年度につきましては、関係各所と協議した結果、年4回、季節ごと四半期に1回、セシウムの放射線量について本所保健センターのNaIシンチレーション検出器で実施することといたしております。前年と比べますと回数が減っておりますが、その理由といたしましては、平成24年2月から学校給食の放射性物質の測定を開始して以来、検出された放射線量の数値が常に国の基準値以下であり、本区の学校給食の安全性が確認されてきたことによるものでございます。
また、平成26年度の他区の学校給食の放射能測定状況も参考にいたしました。本区を除く22区のうち9区は放射能測定を実施しておりません。また、12区は本区と同様に調理済み給食の放射能測定を実施しておりますが、その平均回数は年3回となっております。残る1区につきましては、調理前の食材の放射能測定を実施しておりますが、これは主立った食材を選定して測定を行うもので、調理済み給食の放射能測定のように食材の全てを検査するものではございません。
これまで本区の検査では、放射線量は常にNaIシンチレーション検出器が計測できる限界値以下でございましたので、限りなく放射能数値が低いものと考えてございます。また、調理過程においても流水による徹底した3回洗浄や野菜のゆで汁を廃棄するなど、より安全な給食の提供を実施してまいりました。
次に、2点目の放射性ストロンチウムの測定についてでございます。この点につきましては、平成26年度から品川区が外部委託で年4回実施していたセシウムの測定を本年度は1回減らしまして3回とし、減らした1回分をストロンチウムの測定に充てていると聞いているところでございます。
ストロンチウムとは、セシウム同様の放射性物質であり、福島第一原発の汚染水の関係で報道されてきたところでございます。平成24年4月に施行された厚生労働省の食品中の放射性物質の新たな基準では、ストロンチウムは放射性セシウムの量に対し一定割合が放射されるということが分かっております。こうしたことから、測定されたセシウムの放射線量に一定割合を加算したものがストロンチウムを含めた放射線量ということでございます。
今まで測定してきた墨田区における放射線量を考えますと、このストロンチウムの放射線量等も安全基準の範囲内にあると認識しているところでございます。
本区におきましては、毎回、セシウムの測定数値が基準内であり、ストロンチウムの換算値も基準内であるということを考慮いたしまして、現行の検査体制をもって十分な安全が確保されているものと考えておるところでございまして、ストロンチウムを測定する機器及び人員は配置しておりません。
最後に、調理前の食材の放射性物質の測定についてでございます。市場に流通している食材は、国や自治体等の基準に沿った検査をクリアしていることから、食の安全は確保されているものと認識しているところでございます。こうしたことを前提にいたしまして、平成24年2月から放射性物質の測定を開始して以来、調理済みの給食を測定してまいりました。さらに、調理前の食材につきましても、食材の産地確認など事前の安全チェックを行うとともに、洗浄方法や調理方法を工夫いたしまして、さまざまな取組をしてきたところでございます。
とりわけ調理済みの給食を測定することは、子どもたちが実際に口にする状況での安全を確認するということになりまして、洗浄等とあわせまして二重、三重のチェック体制を整え、安全な給食の提供に努めてきたところでございます。
また、ご指摘いただいておりますキノコ類の放射性物質の測定につきましては、東京都が平成24年度から調理前食材の測定を実施し、本区もこの測定に参加して、干しシイタケの測定を依頼してまいりました。しかしながら、放射性物質は全てにおいて不検出という結果でございました。こうしたことから、東京都は平成25年度をもってこの検査を終了しているところでございます。
また、キノコ類の中に風評被害が懸念されていた国産シイタケの使用につきましても、平成25年12月に文部科学省から安全である旨の通知が出されたところでございます。キノコ類につきましては、近年、ハウスや倉庫内で人工栽培されることが多く、より安全面が確保されているということで問題はないものと考えているところでございます。
福島第一原発事故後の食の安全につきましては、産地との流通過程で国や自治体等による放射能測定が実施されており、本区といたしましても独自に放射能測定を実施し、学校給食の安全は確保されるものと認識しているところでございます。今後とも説明させていただいた内容を着実に実施いたしまして、子どもたちの安全を図り、保護者の皆様の不安を解消するための対応をしてまいりたいと考えております。
○委員長(瀧澤良仁君)
本陳情について何かご質疑、ご意見はありませんか。
◆委員(しもむら緑君)
平成24年2月から我が区もいち早く、全国的に見ても早い段階で学校給食の放射性物質の測定を始め、一度も基準値を上回る測定値はなかったということについて再度確認させていただきたい。また、区のホームページで測定結果を公表していますが、保護者の方々から問い合わせなどが何件ぐらいあって、どのような声が寄せられているのかお聞かせいただけますか。
◎学務課長(齋藤好正君)
1点目の放射能測定の結果でございます。平成24年2月からこの検査を実施させていただいておりまして、本年度で3年目になります。この間、検査導入当初は民間委託して実施していましたが、現在は本所保健センターで検査機器を購入して実施しています。検査結果については全て基準値以下ということで問題ない数値が出ております。
2点目のホームページにつきましては、当初から公表させていただいておりますけれども、現時点においては学校給食に関する問い合わせ等はございません。ただ、放射能に関して現状はどうなのかといったご質問等は何点かございます。
◆委員(しもむら緑君)
分かりました。保護者の不安を解消するという点、子どもの安心・安全という点で、学校給食の放射性物質の測定を実施し、これからも続けていかれるということ、二重、三重のチェックも行っているということですが、今回の陳情は、さらに詳しく学校給食の測定をしてほしいということです。要旨の3の調理前の食材の測定については、流通される段階で厳しく検査され、安全だと判断されたものが店頭に並んでいて、それらを購入しているということです。そのほかの項目に関しても、決してお気持ちが分からないわけではないのですが、給食だけの問題ではなく、放射能の問題については、保護者の不安解消と子どもの安心・安全を守るために、枝葉の部分で考えるだけではなく、大枠の部分で今後どういったことができるのかということを検討していく時期に来ているのではないかと我が会派では話合いが行われました。よって、この陳情に関しては不採択という立場で意見を述べさせていただきます。
◆委員(はらつとむ君)
検査した結果、安全基準を下回っていることが確認されたと言われましたが、安全基準を満たしていれば影響が全くないと言い切れるのかどうか、その辺を答えてください。
◎学務課長(齋藤好正君)
国の基準につきましては、ご案内のとおり、一般食については100ベクレル以下ということでございます。検査機器であるNaIシンチレーションスペクトルメーターにつきましては、基本的にこの10分の1以下の下限値の中で対応させていただいております。国の基準をクリアし、なおかつ検査機器の下限値も下回っているということでございますので、限りなく安全だと認識しているところでございます。
◆委員(はらつとむ君)
検査機器については、確か7ベクレル以下のものは非検出になると思うんですよね。また、国の基準自体が高いという指摘もあって、例えば、陳情文書表に記載されているように、体内セシウムが5ベクレル/(体重)を超えると心電図に影響が出ると試算している学者の意見もあります。また、ストロンチウムもきちんと検出しないといけないのではないかという意見もありますが、その点についてはどうでしょうか。
◎学務課長(齋藤好正君)
ストロンチウムについては、放射性物質の中の一つということが言われております。実は平成24年4月1日に、食品中の放射性物質の新基準ということで、厚生労働省から一定の基準が出ております。この新たな基準値におきましては、セシウムのほか、それ以外の放射性物質、具体的にはストロンチウムですとかプルトニウム、ルテニウムなども含めた被曝線量が1ミリシーベルトを超えないように基準値を設定しているという国の見解が出ております。
したがいまして、そういった全ての値を含めてこのセシウムの値が基準値内であれば、そのほかの放射性物質の比率は分かっておりますので、基準値の範囲内であるということで、基本的に安全だという国の見解が出ております。区としてはそれに倣って、セシウムの検査をすることによって全体の数値も分かるという対応をさせていただいているところでございます。
◆委員(はらつとむ君)
実際には、測定してみないと不安なところもありますので、是非ストロンチウムについても検査するように要望したいと思います。
給食の測定は年4回ということで、これ自体、減らしたとはいえまだやっているということは、各区では廃止している中で保護者の方も一定程度評価されていたと思います。ただ、値が低ければ低いほどよいという立場に立ち、これからも水洗い等、続けていっていただきたいと思います。年4回が年12回になれば、何か異常があればすぐに対応できますし、保護者の安心にも応えることができます。また、年間を通じて、給食に何種類ぐらいの食材を使用しているのか、参考までに教えてください。
◎学務課長(齋藤好正君)
食材はさまざまなものを使っております。したがいまして、何種類とは特定ができない状況です。聞いた話では四、五十種類というような話を聞いているところでございます。
◆委員(はらつとむ君)
それら全てを検査するというのはなかなか難しいと思いますが、陳情文書表に書いてあるキノコ類をはじめ、特に保護者の方が心配されるようなものに関しては、ほかで検査しているとはいえ、区としても同様に検査することが大事ではないかと思います。現在行われている陰膳方式は大事なので続けてほしい。プラス調理前の食材についてもキノコ類は検査してほしいのですが、検査を実施する意思があるのかどうか伺います。
◎学務課長(齋藤好正君)
キノコ類につきましては、最近、人工栽培が増えてきているということです。いわゆるハウスや倉庫の中で栽培している所が増えてきています。もちろん区としても購入時点ではチェックさせていただいておりますし、食材についてはキノコ類も含めて産地の確認など、安全確認をさせていただき、調理過程の中でも水洗いですとかゆで汁を捨てるなどの対応をしております。子どもの口に入る前の最後の測定となる陰膳方式での測定を実施することで、三重のチェックを実施しておりますので、今後も維持していきたいと思っております。
◆委員(はらつとむ君)
今実施していることは維持してもらいつつ、拡充もしてほしいということでお願いしたいと思います。陳情の要旨の中にはキノコ類の測定も求めています。極めて全うな意見だということで陳情を採択したいと思います。
◆委員(西村孝幸君)
食の安全は本当に大事な問題だと思っています。今回の陳情は放射性物質に関する内容ですけれども、それ以外にも食の安全ということがさまざまな場面で言われていますので、一つ一つ丁寧に対応していくということは大事なことだと思っています。
食の安全に関しては、生産者側の風評被害などさまざまな問題が絡んでいる部分もあるかと思います。そういった中で、他区でやっていないところがあるということのお話もありましたけれども、現場を見てみますと、かなりの量の食材を、前の日にとったものを保管をしておいて、それを保健所で測定していただくというような現場を見ておりますと、私自身はかなり墨田区として丁寧に行われていると感じているところです。
そういった意味では、今の体制は維持していただくことを前提に、今後は、区の取組をもう少し丁寧に説明していくということは必要かもしれません。今回の陳情については、現状の取組を今後も実施していただくということで、不採択とさせていただきたいと思っております。
◆委員(おおこし勝広君)
まず、墨田区の小中学校や幼稚園等が食材の調達をしているのは、おそらく区民が日ごろ買いものをする八百屋さんや肉屋さん、魚屋さん等からではないのかと思いますけれども、その辺を確認したいと思います。
◎学務課長(齋藤好正君)
学校給食については、一貫して自校調理方式という方法をとっています。したがいまして、基本的には一般の商店から食材を調達している状況です。これに対し、センター方式という方法もございます。これは横浜市等で行われており、決まった業者から一括して食材を調達するというようなシステムになっています。
◆委員(おおこし勝広君)
そうしますと、給食で使用しているのは、区民が日ごろから食べている食材と同じものを使用しているわけです。1日3食、365日間で計算すると1年間の食事数は1,095食となります。そのうち学校給食は土日休みで夏休み等もありますから、1年間で約200食程度です。そうなると、1,095食分の200食となり、年間のわずか18%です。この陳情者が言われているような形で放射能汚染が心配だということであれば、この18%分の対策を講じても、陳情者の求めている形にはならないのではないかなと純粋に思うわけです。家庭で使用している食材等に関しても、同様の測定等を実施しなければならない。そうしないと、区民の健康被害の問題が出てきてしまうと思います。
発災当初はまさに放射能が拡散し、その情報がきちんと伝わらなかったという状況の中で、さまざまな心配もあったことから、食品等に関しても測定をするなど区は早い段階から対応してきた。現時点で実施していない自治体があるにもかかわらず、いち早く年6回実施したということに関しては、早い取組だったのではないかなと思います。
また、この間の新聞報道を見ると、いわき市では、今年の12月から学校給食に地元産のお米を使用することが決まったそうで、産地の風評被害についても地元ではさまざまな形の取組がスタートしているわけです。墨田区においても、国が決めた安全基準を全部クリアし、食材の流通過程でさまざまなチェックを受け、調理後も測定しているわけです。それで問題ないという結果が出ている以上、これは安全基準に関することではなくて、まだまだ心配な保護者に寄り添った形の支援策が必要だろうと思います。心配な方は、今後も1年経とうが2年経とうが放射性物質に関する閾値の話にもなってきますから、限りなく0ベクレルに近い給食を実現してほしいという陳情なので、現行の取組をしているだけで大丈夫ですよというような形ではなく、もう少しその方たちの話を聞いてあげる中で、不安を取り除く対策が今後は必要になってくると思います。食材を測定するという部分に関しては、現行の取組で良いと思います。ただ、まだまだ現行の測定だけでは不安を取り除けない方に対して、不安な部分をきちんと聞いてあげて、進めていただきたいなと思います。
そういった意味では、学校給食の放射性物質の測定に関する陳情については、我が会派としては不採択ということを申し述べておきたいと思います。
○委員長(瀧澤良仁君)
それでは、本陳情の取扱いについてお諮りいたします。
本陳情については、趣旨に沿うことは困難であるとの理由により、不採択といたしたいが、いかがでしょうか。〔「異議なし」「異議あり」と呼ぶ者あり〕
○委員長(瀧澤良仁君)
ご異議がありますので、起立表決により採決いたします。
ただいまの委員長発議に賛成の方はご起立願います。 〔賛成者起立〕
○委員長(瀧澤良仁君)
起立多数と認めます。
よって、ただいまの発議のとおり決定いたします。
以上で付託陳情の審査を終わります。