「北とまともに交渉できるのか」被爆・拉致関係者が非難

5月25日12時33分配信 読売新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090525-00000502-yom-soci

 25日正午前、北朝鮮が核実験に成功したというニュースが流れた時、拉致被害者家族会事務局長の増元照明さん(53)は、東京・文京区の同会事務所に入った直後だった。

 先月の長距離弾道ミサイルの発射実験について、国際社会に厳しい見方が広がる中、北朝鮮が核実験を強行するかもしれないという観測も流れていたが、「こんなに早いなんて」と一瞬、耳を疑い、テレビのニュースに見入った。

 「相変わらず思い通りにならないと、だだをこねる国だと思うが、日本や米国は手を打てたのでは」。増元さんはそう指摘した上で、「米国はじめ国際社会は制裁を強化すべき。北朝鮮を追い込むことで、拉致問題の解決にも間接的に影響してくるのではないか」と話した。

 同じく同会代表の飯塚繁雄さん(70)は「米国を中心とする国際社会が甘い対応を取っている間に、北朝鮮が、好き勝手な振る舞いを続けている証し」と語った。

 ◆被爆者も落胆◆


 25日に行われた北朝鮮の地下核実験を、広島や長崎の被爆者らは強く非難した。

 オバマ米大統領が4月、プラハでの演説で「核のない世界」の実現を呼びかけ、核兵器廃絶を目指す世界的な流れができつつあっただけに、落胆の声も聞かれた。

 広島県原爆被害者団体協議会の坪井直理事長(84)は「世界が核はいらないと言っている時に、絶対に許されないこと。全く理解できない。金輪際、やめてほしい」と怒りをあらわにした。同協議会などは25日夕、広島市中区の平和記念公園内で抗議の座り込みをする。

 5月に核拡散防止条約再検討会議の準備委員会に合わせて米ニューヨークの国連本部でスピーチをした広島市東区の被爆者、岡田恵美子さん(72)は「オバマ演説など明るい兆しが見え、私たち被爆者も前向きに行動しなければいけないと思っていたのに、非常に残念」と話した。

 同市中区の広島平和記念資料館には、最後に実施された核実験からの日数を表示する「地球平和監視時計」があり、25日は過去最長の「959日」に達していた。しかし、今回の核実験でリセットされる。前回のリセットも2006年10月の北朝鮮の核実験で行われており、前田耕一郎館長(60)は「国際社会の流れに逆行する行動。第2、第3の北朝鮮が現れないか、心配だ」と語った。

 在日本朝鮮人被爆者連絡協議会の李実根(リシルグン)会長(80)は「オバマ大統領の意思が北朝鮮には伝わっていない。米国と北朝鮮が非核化に向けた話し合いをしてほしい」と述べた。 最終更新:5月25日14時38分