金賢姫元工作員、本紙に手紙 拉致解決「至誠通ず」

3月5日8時3分配信 産経新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090305-00000110-san-int

 【ソウル=黒田勝弘】大韓航空機爆破事件(1987年)の犯人として逮捕され現在、韓国で暮らしている金賢姫元北朝鮮工作員(47)はこのほど産経新聞に手紙を寄せ、近く予定されている拉致日本人の一人、田口八重子さんの家族との面会に強い期待を語るとともに、「至誠天に通じる」として拉致解決に向けた日韓の協力を強く訴えている。

 手紙は黒田勝弘・産経新聞ソウル支局長あてとして人づてに届けられた。

 今回の面会では田口さんの兄、飯塚繁雄さんや息子の飯塚耕一郎さんと会うことになっているが、手紙は田口八重子さんが「成長した息子が母の救出運動をしているという事実を知れば新たな希望をとなって生きていくことでしょう」とし、田口さんの生存を前提にしたものになっている。

 手紙は「至誠感天(至誠天に通じる)」という言葉で問題解決への日韓協力を強調し、いつの日か「田口八重子氏が家族と面会するという(新聞の)1面ニュース」が実現することに期待をかけている。

 手紙にはまた、田口さんの家族に触れることで、北朝鮮に残した生死不明の自分の父母、兄弟など家族への思いもつづられている。

 金賢姫元工作員は工作員時代に北朝鮮で「李恩恵(リ・ウネ)」と名乗る田口さんから日本語をはじめ「日本人化教育」を受けた。金賢姫の供述で「李恩恵」の存在が明るみに出た後、日本側の捜査でそれが田口八重子さんと分かった。

 当時、2人は工作員施設で長期間、共同生活しながら過ごしたといい、彼女の田口さんに対する思いは深く、その様子は手記『忘れられない女(ひと)-李恩恵先生との二十カ月』(文春文庫版)に詳しく記されている。

 金賢姫元工作員は親北・左翼的だった盧武鉉前政権時代に「大韓航空機事件は韓国側のデッチ上げで金賢姫はニセ者」といった北朝鮮に同調する謀略説の広がりにひどく悩まされた。李明博政権への交代を機に積極的に反撃に出ており、北朝鮮批判に取り組んでいる。拉致問題にも関心が強い。

 田口さん家族との面会計画は日韓両国政府の協力で進められ、近く釜山市のホテルで行われる見通しだ。面会の際は共同記者会見が予定されているが、これまで公開の場に出ることがなかった金賢姫元工作員としては、この機会にさまざまな思いを語りたい考えのようだ。