【洞爺湖サミット】“張り子の成果”否定できず

7月9日21時38分配信 産経新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080709-00000960-san-pol

 福田康夫首相が議長として仕切った主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)は9日閉幕した。首相は焦点の地球温暖化対策での前進などを強調し、サミットの「成果」を高らかに宣言した。ただ、内実は議長としての指導力や存在感を十分には発揮したとは言い切れず、“張り子の成果”にとどまった側面は否定できない。政権の「分水嶺(ぶんすいれい)」ともいわれたサミットを終えた首相が、次なる政治課題である内閣改造に踏み切るかどうかが当面の焦点になる。(高木桂一)

 「率直に本音の議論をする中で、時には互いに激しくやり合う場面もあった。そのおかげで多くの成果を生み出すことができた」

 サミットのフィナーレを飾る議長記者会見の冒頭で首相はこう胸を張った。

 温暖化対策では、2050年までに世界全体の温室効果ガスを半減させるという長期目標を世界共通の課題として主要8カ国(G8)が国際社会に実現を求めるところろまで前進させた。「首相が首脳レベルのギリギリの交渉を水面下で続けた」(周辺)とされ、長期目標設定に難色を示していた米国を巻き込んだ。

 だが、これに法的拘束力はなく、各国の対立の図式は変わらない。この「成果」は今後の国際交渉の進展を担保しておらず、弥縫(びほう)的な合意であることは否定できない。

 国際社会の緊急課題に浮上した原油・食糧高騰問題についても、世界経済への強い危機感をG8で共有した。しかし、拡大会合に参加したアフリカ諸国の悲鳴を直に耳にしながら、対症療法は打ち出せず、米国に配慮してか、投機マネーの規制、監視など強いメッセージも発出できなかった。

 また、対北朝鮮政策に関連し、これまで議長総括にとどまっていた「拉致問題」の文言がG8の首脳宣言に初めて明記されたことは一歩前進だった。だが、独立した項目ではなく朝鮮半島の非核化プロセスの一部という扱いになり、北朝鮮への強烈なメッセージになったとは言い難い。

 首相は、年明けから海外での国際会議に飛んだり、自らの「福田ビジョン」を発表したりと、サミットを見据えた準備に余念がなかった。背景には、内閣支持率の低迷が続く中、サミットで得点を稼ぎ、政権浮揚への足掛かりとする思惑があったが、自民党閣僚経験者は「首相が胸を張るほどの成果はなかった。もう少し指導力をみせてもよかった」と注文をつけた。

 首相はサミットを大過なく乗り切ったものの、「これで内閣支持率が大きく上昇することはない」(自民党筋)との見方が強い。党内の関心は内閣改造に移っており、首相は近く、今月下旬から8月上旬のタイミングで内閣改造を断行するかどうか決断する方針だ。

 改造には、「福田カラー」をアピールする布陣を敷くという狙いがある。だが、「派閥の推薦に沿った改造をすれば支持率はさらに落ち、新閣僚にスキャンダルが発覚したら衆院解散に追い込まれかねない」と政治アナリストの伊藤惇夫氏は指摘する。首相が人事でつまずけば、党内でくすぶっていた「サミット花道論」が沸騰する可能性もある。