★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2007.09.21)
「被害者全員を助ける」の覚悟堅持を-西岡副会長

 金正日が拉致を認めて謝罪してから5年目に当たる、今月9月17日に、西岡力・救う会常任副会長の原稿が産経新聞【正論】欄に掲載された。以下はその全文。ご参照ください。



■「被害者全員を助ける」の覚悟堅持を-西岡副会長

安倍首相辞任 東京基督教大学教授・西岡力
 □拉致認めた「日朝会談」から5年
 ■「被害者全員を助ける」の覚悟堅持を

 ≪2つのウソを完全に論破≫

 2002年9月17日、あの怒りと悲しみの「日朝首脳会談」から早くも5年になる。この日、北朝鮮の金正日総書記は「でっち上げ」と否定していた拉致を認め、5人の被害者の生存を明らかにした。しかし、新たに「拉致したのは13人だけ」「めぐみさんら8人は死んだ」という2つのウソをついた。

 この2つのウソをわが国は完全に論破した。拉致被害者は13人どころではない。政府は17人を拉致被害者と認定しており(これ以外に警察が日本人母の子2人を拉致と認定)、筆者を含む多くの専門家は最低100人程度と推測している。

 めぐみさんたちは生きている。なぜなら、8人死亡と言い募っている北朝鮮がこの間出してきた死亡診断書、病院死亡台帳、交通事故調査記録、遺骨などがすべて偽物だったからだ。

 昨年9月に成立した安倍政権は、被害者生存を前提として、政府認定だけでなく拉致された全員の安全確保と帰国を北朝鮮に強く求めるという画期的方針を打ち出した。首相官邸のホームページには「拉致問題は『解決済み』ではない(北朝鮮側主張の問題点)」という反論が掲載されている。

 

 ≪次期政権も拉致最優先で≫

 首相を本部長とし全閣僚が加わる拉致問題対策本部が設置され、拉致問題が国政の最優先課題になった。「政争は水際まで」が原則だ。安倍首相の突然の退陣は大変残念だしショックだったが、次期政権も拉致を国政の最優先課題とする姿勢を継続しなければならない。

 もう一つ、継続してほしいことがある。それは解決のための戦略だ。拉致被害者全員帰国を実現するためには、時間稼ぎをすればするほど金正日政権が苦しくなるという状況をつくらなければならない。

 戦略は守りと攻めの2つがある。守りの戦略は、拉致解決まで絶対に経済支援しないと固く決め、それを機会あるごとに北朝鮮と関係国に伝えることだ。「拉致解決なしには国交正常化なし」「国交前の経済支援なし」「核問題が進んでも拉致の進展なければ支援せず」という現在の政府の方針がこれにあたる。

 一方、攻めの戦略は、解決への動きを見せなければ制裁を強化し、より締め上げることだ。いまわが国は2種類の制裁を実行している。法律に基づく貿易・送金・船舶入港禁止などの制裁と、「現行法制度の下での厳格な法執行」(拉致問題対策本部「拉致問題における今後の対応方針」)である。後者の例をあげれば、日本政府は朝鮮総連を相手に600億円の債務返還訴訟を起こし、6月に1審で勝訴した。全国の総連の総資産は200億円未満というから、この裁判に勝てば中央本部を含む総連の全資産が競売されることになる。

 警察も北朝鮮と総連関係者による違法行為を厳しく取り締まり続けている。1月18日警察庁の漆間巌長官(当時)は「北朝鮮に日本と交渉する気にさせるのが警察庁の仕事。そのためには北朝鮮の資金源について事件化し、実態を明らかにするのが有効だ」と述べた。次期政権は制裁を決して緩めず、強化していく姿勢をとるべきだ。

 

 ≪制裁効果を核に限定するな≫

 平成17年9月から開始された日米の制裁は大変効果を上げている。いま日米が行っている制裁は金正日の秘密資金と核・ミサイルの技術・部品などを目標としており、これらは中韓などが簡単に肩代わりできない。約50億ドルという秘密資金の8割が米国金融制裁により凍結状態になり(ソウル情報筋)、昨年7月の「テポドン2」ミサイル発射実験の失敗は日本の制裁により部品が手に入らなかったためという(西側軍事筋)。

 困った金正日が昨年10月以降、急速に対米接近し、核を放棄するとの口先での約束をくり返し制裁緩和を求めている。ブッシュ政権の対北融和政策には、制裁の効果により金正日が米国にすり寄らざるを得なかったという背景がある。

 ここで大切なことは、効いている制裁の効果を核問題だけに限定して使われないようにすることだ。そのためには、守りと攻めの戦略で、わが国は拉致解決なければ支援は一切せず逆に金正日をより追い詰めるという強い意思を示しつつ、常に拉致問題の解決を外交交渉の議題にのせ続けることだ。

 今夜も北朝鮮の地で横田めぐみさんたちが月や星を眺めながら、同じ夜空を両親、家族が見ているはずと思いながら、故郷に帰れる日を待っている。かならず助けるという鉄の覚悟を私たち国民と次期政権が共有すべきときだ。
(にしおか つとむ)


 多くの拉致の被害に遭われた方、そのご家族が、今も再会の日を待っています。

 その日が一日も早く訪れる事を信じて、活動を続けてまいります。