あの人達から ぼく お金なんてもらってないもん
ぼくが 知らない内に 背広の内ポケットに入っていたんだもん
ぼくは 悪くないよ ぜんぜん悪くないんだ
きっとあの人が悪いんだよ あの人のせいだよ
あの人が すべて一人でやったんだ
だから ぼくは ぜんぜん悪くないんだ
いつもみんなの前で 嘘ばかりを吐いている
そんな子供の姿を神様は見て 本当に可哀想な子だなと
この子は もう治らない病気だと知って
この侭 この世に於いておくのは哀れだと
彼の手を引き あの世に連れて行きました。
やれやれ 人を騙す嘘吐き病の子を やっと助ける事が出来たわい
これで人々も 安心して暮らせるだろうと
神様は 大きな溜息を ホッと 一つ吐きました。
一安心しながら昼寝をしていた神様は 大きな声で目を覚ましました。
狼だ 狼が来るぞ 街中で人々に逃げるようと 大声を上げている少年がいます。
来る日も来る日も 狼が来るぞ 狼が来るぞと大声を上げて
しかし 狼は一回も現れたことがありません。
そうです その子も 嘘吐き病の子なのでした
神様は また連れて行けばいいと 安易に考えていましたが
その病気の元となる病原菌は 既に進化を遂げていて
すぐに人に移る 強い感染力を持っていました。
みるみる間に 次々と出て来る嘘吐き病の子に 神様は助ける事を諦めてしまい
ついには 嘘吐き者で溢れり 嘘の良い訳ばかり だれも責任を執らない
まったく無責任な国に なってしまいましたとさ おしまい。