恩田さんの新作。
もう、なんか最初から不穏!
目次から不穏!!(笑)
そしていきなり二人称で始まる本文。
「あなたは…」と誘導されつつ、謎めいた、塔と水路の町に入っていくわけですよ。
どうやらその町では最近殺人事件がおこっており、犯人はまだ逮捕されていないらしい。
しかも、被害者そのものが謎めいた存在で…。
不穏~!!!!
この「塔と水路」にプラスして、
目に入ったものをすべて記憶してしまう特殊な脳、というモチーフ。
こういう脳のひと、実際いるらしいですねぇ。
映画「レインマン」にもモデルがいるし(まだ健在なはず)、
ナントカって脳の先天異常の人たちのなかにはこういう能力を持つ人が多いとか。
テレビでみたので、「ナントカ」の部分は忘れたけど。
記憶だけで、詳細な風景画を描いたりするんだよね。
そういう人って、どういう世界を感じてるんだろう…。
そうじゃない人たちがスタンダードなこの世の中、いろいろキツそうだなぁ。
章ごとに時間軸はぶっ飛ぶし、語り手の視点も変わるので、
ますますこんがらかっていきます。
「こんなにこんがらからせて、ちゃんと終結できるのか!?」といらぬ心配。
終結方法、肩透かしに思うひともいるかもしれないけど。
でも、これだけたくさんの語り手を出しながらもぐいぐい引き込んでおいて、
しっかり美しく終結させて、しかも時間軸的には最初に戻るという…鮮やかでした。
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失踪した男は遠く離れた場所で殺されていた 塔と水路の町にある「水無月橋」。霜の降りるような寒い朝、殺人事件が起こる。バス停に捨てられていた地図に残された赤い矢印は……? 恩田陸待望の新刊。