前のエントリから)

阿修羅展の会場へ入ると、最初のコーナーは、明治になって発掘された中金堂の鎮壇具(ちんだんぐ)。創建時をしのぶ工芸品は国宝になっているそうな。
すじてつジャストライン-中金堂鎮壇具

そして、金鼓(華原磬・これも国宝)のあとにいよいよお出ましになるは、阿修羅像である。
すじてつジャストライン-正面からの阿修羅
もちろん、こんな状態ではとても見られない。台の周囲の丸くなっているところは何重にも人垣ができている。
そこで、人垣の一番内側に立っている係員が何をしているかというと、「では皆さん動きましょう」と声をかけている。
「いーち、にーぃ、さーん、しーぃ、ごーぉ、ろーく、……とーぉ、じゅういち、じゅうに」
きっかり十二足、カニのように横へ横へとじわじわ位置を移した。
はじめ見たときは、何だか妙なことをしてと思ったが、実際こうでもしないと、塊になったところへ内に圧力がかかるから固まったままになってしまう。
一致団結してかかれば、皆ひと回りして全体を見られるというわけである。
人垣に混じって動いてみると、「右繞(うにょう)」という語を思い出した。
時計回りに歩くのは、古式にかなっている。本当は像に敬意を払うために右肩を向けるところから来ているが、ここは鑑賞だから細かいところは措いておく。そういえば四国遍路も右回りだ。イスラム教のカーバ神殿も…そうかと思ったら、こちらは反時計回りらしい。

集団に身を委ねつつ、しかし各々が小足で横へ踏み出していく、というのは何か宗教的な行事を体験しているかのような感覚があった。
動いては見て、また動いて、何回かのよちよち歩きで、横から後ろ、そして右側、とその姿を拝した。
すじてつジャストライン-右前方からの阿修羅

すじてつジャストライン-右後ろからの阿修羅

塊から抜け出ると、八部衆(展示は阿修羅のほか、沙羯羅さから、迦楼羅かるら、乾闥婆けんだつば、緊那羅きんなら、の計5体)、十大弟子(現存6体のうち富楼那ふるな、舎利弗しゃりほつ、目犍連もくけんれん、須菩提すぼだい、の4体)
すじてつジャストライン-迦楼羅など八部衆と十大弟子
すじてつジャストライン-十大弟子
すじてつジャストライン-乾闥婆と十大弟子

第3コーナーは鎌倉復興期、慶派による四天王像、焼失した西金堂の本尊だった釈迦如来像頭部など。
すじてつジャストライン-持国天と広目天
↑キャプションは間違ってないと思うが、いま確認した限りでは、東西南北を反映した並べ方ではない!?

すじてつジャストライン-運慶作の釈迦如来像頭部ほか

このほか、再建予定の中金堂ヴァーチャルリアリティ映像、阿修羅像の三次元再現映像、も興味深いものだった。
時代背景などを解説した4コマイラストも鑑賞の助けとなると同時に、ほっとひと息つける感じ。
すじてつジャストライン-4コマイラストによる解説


※写真はすべて九州国立博物館から提供を受けたもの