こんにちは、ヤドンです。

一般企業に勤務する傍ら、東京海洋大学大学院で水産学の研究をしているM1です。

 

東京大学で過ごした学部時代では、南太平洋に生息するウナギの生態およびウナギ養殖の研究、大学院では水産養殖の計量経済研究をしてきました。今回、東京大学大学院経済学研究科の友人の呼びかけから、これまで私が興味を持ってきたウナギと水産養殖について、徒然なるままに書いていこうと思います。

 

【実際どうなの、ウナギ資源】

 既に色々な媒体で伝えられており食傷気味かとは思いますが、ニホンウナギの資源量急激に減少しています。ピークである昭和30年代には年間250t弱のシラスウナギが日本で採捕されていましたが、最近では5tほどにまで減っています。原因は環境破壊や乱獲が原因とされていますね。

 日本の資源がやばいなら、中国や台湾なんかから持って来ればいいじゃないの!という方もいますが、この子たちはフィリピンからもう少し東に行った海域で生まれて海流に流され東アジアに分布する日本のものと同じ集団に属しているため、同じく資源量は落ち込んでいると考えられます。いわゆる「養殖ウナギ」といえど、種苗は天然から採捕されたものを使っているため、食べられるウナギの量がどんどん減っているという状況なのです。

 

【完全養殖、やってみた】

 じゃあ、完全養殖すればいいじゃないか。マグロもできたんだからウナギもできる!という話がありますが、なかなかそううまくいっていません。技術的には成功しているものの、まだまだ商業ベースに乗るレベルではありません。

 原因の一つは、仔魚・稚魚の発育がうまく行かないことにあります。これまでは餌として何を食べさせれば良いかわからないという問題があったのは割と有名ですが、最近はだいぶ解決されてきました。それよりも、親ウナギに産ませた赤ちゃんウナギを、上手に大人のウナギにしてあげられないという問題の方が大きくなっています。奇形の個体が生じる・うまく変態してくれない、などの問題から、上手に生産できないわけです。私も飼育実験を何度か行ったことがありますが、なるほどこれは難しいと思わざるをえませんでした(守秘義務があるため、論文として発表されていないものについては細かくは書けません)。

 

【ウナギがないなら別のウナギ?】

 ニホンウナギが採れないのなら世界のウナギを食べてやれ!というのがここ最近の動向です。最近といっても、これまで日本はヨーロッパウナギ(Anguilla anguilla)、アメリカウナギ(A.rostrata)などの海外ウナギを既に中国などを介して食べてきています。これらのウナギも既に資源量が非常に少なくなってしまったため、今度は南太平洋のウナギに手を出し始めたというわけなのです。

 南太平洋のウナギに詳しい方はあまりいないと思うので、簡単に説明しようと思います。南太平洋には、A.autralis、A.dieffenbachii、A.marmorata、A.bicolor pacifica、A.megastoma、A.obscura、A.reinhardtiiの計7種がいます。これらの種については、仔魚の分布に関する研究やポップアップタグを用いた研究などを通じて知見の蓄積が図られていますが、まだまだ情報が足りていないというのが現状です。IUCNレッドリストでも「未評価」「情報不足」としか評価されておらず、適切な資源管理を行う以前の状態であるわけです。

 このような状況にあるにも関わらず、既に国内での消費が行われています。ニホンウナギに見せかけて流通させる、というのもあったそうですが、中には以下のようなものもあります。諸々書きたいことはありますが、「資源はなくなるまでとり尽くし、なくなったら別の資源をとり尽くす」という態度を続けて本当にいいのか?そこにsustainabilityはあるのか?と問いかけてしまいます。

 

【にょろりの次は、ぬらりかな】

 そんな状況の中で着目されているのが、ナマズです。近畿大学の有路先生という方が、ウナギ味のナマズという商品を開発しました。ウナギとは確かに少し違うものの、とても美味しく出来上がっています。

 実はこのナマズ、完全養殖技術が確立されていて、ウナギと同じく淡水で飼育することが可能で、飼育する水や餌を工夫すれば臭みのない肉を作ることができ、主要な市場である海外輸出も可能な商品とでき...という超優等生なのです(そのことを見抜き地道な開発努力を続けられた有路先生その他の皆さんの素晴らしさたるや!)。上記で述べた問題に対して一石を投じるものではないでしょうか。

 

【水産養殖の未来】

 生態研究から養殖の研究へと進みましたが、私は(ウナギ・ナマズに限らず)水産養殖に世界の未来をみています。人口が爆発的に増えている中で、どうタンパク質を供給して行くか?それも、生産する上で天然資源・環境にできる限り負担をかけずに済むようにできないか?食品の安全をどう確保して行くか?そのような問題に対する解決策を、現在までの水産養殖技術の発展が示してきていると思うのです(詳しくはまたの機会に...)。実際に自分で手を動かして水産養殖技術を発展させたい・またそれを世界中に展開させたいと心から思っています。

 

【私がこれからしたいこと】

 そんな私は今、水産養殖業の計量経済学的研究の傍ら、循環式陸上養殖技術(RAS Recirculating Aquaculture System)に興味を持って調べています。その中でも特に、水質を遠隔地から・自動的に・いくつものプラントに対して制御する仕組みを作ろうと思い、現在(primitiveな形ではありますが)先行研究をみながら構築中です。また今度の機会にお話しできればと思います。