数年前、親友と台湾に行った。
降り立った場所は台湾桃園国際空港。
台湾の北の方にある空港。そこから首都である台北市が近いので、台北を拠点に観光をした。
街の中を探索したり、夜市を歩いたり、千と千尋の舞台とも言われている所謂、『九份(きゅうふん)』にも足を運び、割と観光を楽しんだ。
因みに九份は僕の感想としてはショボかった。。
ある程度台北市付近を楽しんだ後は、台湾の南にある高雄市に行く為、新幹線を使って縦断した。
高雄市もだいぶ栄えているところで、見渡す風景もビルが立ち並び、その中に大公園があったりと、東京とあまり変わらない感じ。(東京も数回行ったことのある程度だけど)
そんなこんなで帰りは高雄国際空港から沖縄へ帰り、僕らは台湾の観光を終えた。
これが前提、これまで触れなかった旅行で一番重要な事がある。
そう、『食事』!!!
とーーーーーにかく向こうの食事は僕らの口に合わない。
disっているのではない、僕ら二人の舌に合わなかったと言うだけだ。
一つ本当に解せぬ事がある。
台湾の北から南、都会も田舎も九份も夜市も、コンビニも新幹線の中で食べた駅弁も、商業施設のレストランも、全て、そう、全て、ぜっっっっんぶの料理に『八角』という悪魔が入っていた。
八角とは香辛料の一つで、ドライフラワーにした花を上から見た様な見た目で、花びらの様な部分が八つある。
風味はなんというか、甘くて独特のものがある。香りはかなり強い。
その八角が本当に全ての料理に使われている。
弁当、パスタ、スープ、チャーハン、ソーセージ、揚げ物、口に入るもの全て。その料理との相性が合う合わない一切関係なし。
その悪魔を台湾人は受け入れ、生活を共にしている。
僕らからは悪魔に見えても彼らには神に近いのかも。
まだ台北市に滞在していたときから、八角という悪魔との戦いに疲弊した僕らは、高雄行きの新幹線に乗る前に買った駅弁に藁にもすがる様な希望を抱いたが、それも儚く散った。
商業施設内のレストラン通りは、呼び込みに活気があり、通りかかったレストランの前に立っていたお姉さんにうちで食べていかないか、とかなり強引な感じで引き止められたので、丁度何を食べるのか迷っていた僕らはそのレストランに入ることにした。
その前に一つ確認、ということで翻訳アプリを開き、『八角が入っていない料理はありますか?』と中国語(簡体) に変換した文字を水戸黄門のようにお姉さんの顔の前に突き出した。
あんなに強引に引き入れようとしていたお姉さんの愛想の良い顔はみるみる引き攣った顔に変わり、呆れた様に首を振り、
『帰れ』
というニュアンス(おそらく)の言葉を一言発し、奥に引っ込んでいった。
今思えば当然な対応だろう、彼ら彼女らからしてみれば崇めている神を拒否された様なものだ。
台湾は面白いところだ。
公道を走る自転車の数は日本では見ることのできないほど多い。
歩道は青に変わって赤になるまでカウントダウンをしてくれる。
電車に乗る時はチケットがコイン式。
公共の乗り物内で喉を潤すと罰金。
夜市では鶏の足を揚げたものを売っている。
特に足マッサージに行った店の名前が『左脚右脚』だったのは何というか安直なネーミングで笑ってしまった。
台湾は面白いところだ。
だけど『食』という大きなところで僕らとの相性は狂いに狂っていた。
僕らは絶望した。
余談だが八角のことを中国語では『バージャオ-Bājiǎo-』と言うらしい。
バージャオ、反対。
負け戦から逃げ延び疲弊した兵士の様な顔をした僕と親友の二人は高尾国際空港から那覇空港と降り立った。
二人して口数も少なく、亡霊の様に那覇空港にある沖縄そば屋さんに吸い込まれていった。
注文をして数分、僕らの目の前には僕らの信仰する神が姿を現す。沖縄そば。
数週間ぶりの飯に食らいつくかの様に必死に沖縄そばを啜る僕らの心は、この瞬間に本当の意味で故郷に帰ってきた。涙が出そうだった。
無事に食べ物にありつけ満腹になった僕らは、勘定を終え、暖簾をくぐり外へ出た。横並びになり一息を吐く。この時の二人の心はソゲキングとウソップくらい完全に一致していたと思う。
そう、
『沖縄そばが世界一美味しい。』