今回の衆院選の期間中、テレビ各局では「アベノミクスの成否」「政治とカネ」「集団的自衛権」「特定秘密保護法」といったあたりを選挙の争点として論じている場合が殆どでしたが、それが急に投開票日の夜8時を過ぎたあたりから、今度は示し合わせたかのように憲法改正の発議要件に達したとか、憲法改正を進めるだろうとか、憲法改正の話に焦点を定め始めました。
 
 今まではむしろ忘れ去られた感すらあった憲法改正の話が、急に今になって各社一斉に飛び出してきたのです。この予定調和ぶりと言いましょうか、あらかじめ準備されていたシナリオをそのまま予定通り展開しているような有り様が、僕には不気味に感じられました。

 勘違いされたくないので申し上げておきますが、僕は憲法改正論者です。憲法改正に諸手を上げて賛成している立場です。

 ですから憲法改正が前進すること自体は喜ばしいと思いますけれども、この選挙期間中は全くと言っていいほど触れられてこなかったこのテーマを、投票が終わったと同時に出してくるのは、それはいくらなんでもおかしいだろうと違和感を主張したいのです。

 そもそもマスコミの政治報道が何のために存在するかといえば、国民が政治を判断する材料とするためです。マスコミの報道を見て政治を判断し、それを投票行動に反映するのが民主主義の根幹であるはずです。
 それが、よりにもよって投票が終わったと同時に出してくるとは、まるでマスコミが政府とグルになって波風立たないように隠し立てしていたと疑われても仕方のない、実に胡散臭い動きではないでしょうか。

 今回の衆院選を前に自民党が各メディアに報道統制のような通達をしたとかしないとかで少し騒動になりました。

【衝撃スクープ】安倍政権が在京キー局に報道圧力 メディアは一切報じず
http://no-border.co.jp/archives/29109/

 この問題も空気を読まないフリージャーナリストとして知られる上杉隆氏が暴露するまで内々で隠蔽に近い扱いをされていた事は記憶に新しいと思います。上杉隆氏が暴露し、それがネット上で拡散したことで、それでようやく各マスコミが後追いの形で報じ始めたのでした。

 日頃は「報道の自由」「国民の知る権利」などと崇高な理念を吹聴している大手マスコミの皆様方ですが、蓋を開けてみれば、まるで戦前回帰よろしく、全員揃って御用メディア化が著しいではありませんか。



 今日の昼過ぎに行われた安倍総理の記者会見の模様をテレビで見ていましたが、記者の質問があまりに低レベルで、呆れて物が言えませんでした。

 確か朝日の記者だったと思いますが、「戦後最低の投票率となりましたが、これで国民の信任を得られたとお考えでしょうか?」などと聞いていました。
 安倍総理からすれば、こんな容易い質問はありません。決まりきった「慢心してないよアピール」で二言三言返答してハイ終了です。街頭インタビューにもキレてしまうキレやすい性分の安倍総理ですら心穏やかに返答できる、実につまらない質問です。

 その他の記者の質問も似たり寄ったりです。どうしてもっと核心に触れるような質問ができないのでしょうか。怒らせたらマズイとビクビクしながら聞いているのがミエミエでした。だいたい出てくる記者が若い人ばかりです。海千山千の政治家を相手に核心に触れるような質問をするには相応の経験が必要な筈ですが、それがこんな自己紹介も「朝日新聞の○○と言います」みたいな中学生みたいな事を言っている記者しか出せないようでは、低レベルにも程があるのではないでしょうか。

 NHKの政治番組でも、わざわざ視聴者からの声を政治家に直接ぶつけるコーナーを設けておきながら、実際に取り上げられる視聴者の声は「戦争する国にしないで欲しいです」とか「与党と野党でもっと協力しあって欲しいです」みたいな、小学生の質問みたいなものばかり選ぶ始末です。
 なぜもっと政治家が答えに窮するような際どい質問をぶつけないのでしょうか。

 


 結局マスコミは国民を前に形だけのファイティングポーズを作って政治家に向けて見せているだけではないでしょうか。

 本気でぶつかって核心に迫る気持ちなど、微塵も持ち合わせていないのではないでしょうか。

 思えば、今回の衆院選の解散風報道も、政府と昵懇と言われる読売新聞の記事から始まったものでした。読売だけでなく、NHKも朝日も毎日も、気付けば大政翼賛的なつながりを作って国民に背中を向けるようになっているのではないでしょうか。

 新聞もテレビもこれから本格的にインターネットと顧客の奪い合いをしていかなければならなくなるというのに、今からこの調子では、本当にその存在意義が問われるのではないでしょうか。


 投票率にあまりの低さにガッカリするのと同時に、日本のマスコミのあまりのレベルの低さに本当にガッカリさせられた今回の衆院選でありました。


以上

選挙期間中の「自民圧勝」報道 どんな意義があるのか
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