「つらい」
彼女は、まるで自分が
世界の中心みたいに言った。
いや、ごめん、
嫌味じゃないんだ、
たしかに彼女は今、
世界のこの辺で「いちばん」忙しく、
きっと「いちばん」つらいのだ。
それはきっと
私のそれよりずっと大きくて、
でもその実態は、
友人の私にも分からないのだ。
そう、分からないのだ。
私の「つらい」も、
彼女には分からないのだ。
「私の『つらい』はどこへいくの」
「あなたの話を延々聞いてる、
あなたの彼の『つらい』はどこへいくの」
そんな言葉は飲み込んだ。
彼女と彼の、
私と彼の、
そして私と彼女の関係を壊しかねない、
そんな生きづらさが、ここにある。
彼女は、結局だんまりな私をちらと見て、
また「つらい」とこぼした。